崩壊〜親密〜-9
「ウチのヤツがな、キミが約束を破るんじゃないかって気が気じゃないんだ?」
際どい質問に、涼子の口調に冷たさが加わった。
「約束は守ります。彼が18歳になるまで絶対に話ません」
「だが、今夜の件でも、問題無いなら電話で済む事だろう?」
「確かに言われる通りです。でもね、真仁さん。私も女なんです!今まで必死に耐えてきましたが、やっぱり無理なんです…」
涼子の言い分に、真仁は苦い顔をした。そして、“分かった”とだけ告げて電話を切ってしまった。
「アナタ、誰だったんです?」
寝室で寝ぼけ眼の優子が訊いた。が、真仁は“仕事の事だ”とだけ言って床に着いた。
その頃、涼子は嗚咽混じりに泣き崩れていた。自分でも間違っているのは分かっている。しかし、仁志の顔を見た瞬間、抑えていた感情が吹き上がった。
そんな両者の思いは露知らず、仁志はタクシーの中で眠りに落ちていた。
…「崩壊」〜親密〜完…