僕とあたしの夏の事件慕? 第一話 「お金持ちは色々タイヘン!」-7
手馴れた様子の梓さんは、普段学校で見せている顔とは違う。気品っていうのかな?
「それで梓、さっきの話の続きだけど、あたし達はいったい何を……」
「澪、シィー……」
梓さんは慌てた様子で人差し指を口に立てる。
しばらくして愛美さんがいなくなったのを確認すると、ようやく口を開く。
「真琴君、澪、いい? あくまでも二人は遊びに来ただけ、何かを探している素振りを見せちゃだめよ! 言いにくいんだけど、あの人も信用できないから」
「……信用って、何か問題でもあるの?」
梓さんの深刻そうな様子に合わせ、僕らも声が低くなる。いったい何を探すというの?
「そのね、真琴君に探してもらいたい物……パパの遺言書なの……」
◇――香川澪――◇
そういえば去年の夏頃だった、梓が忌引きで学校を休んだの……。
親族のお葬式だと聞いてたけど、お父さんのことだったとは知らなかった。
同じ小中学校だったクラスメートの話だと、梓は小さい頃にお母さんも亡くしているらしい。となると、今はお姉さんと二人だけ……。
もしかして、今の梓はすごく寂しいんじゃないかな……やっぱり、あたしも来て正解だったかしら?
「でも、今更になって遺言書って変です。お祖父さんのならともかく、お父さんの遺産は梓さんとお姉さんで相続するものじゃないんですか?」
あたしが感慨に耽っていると、真琴が公民の教科書のようなことを言う。
「それが……姉さんはまだ大学生だからって、卒業するまでは真二叔父さんが後見人をになるって譲らないの。このままだと真二叔父さんにパパの遺産を管理されちゃうし、そんなことになったら、パパとの思い出のあるお家も、この別荘も……」
なるほど、お金持ちにはそれなりの苦労があるわけか。