僕とあたしの夏の事件慕? 第一話 「お金持ちは色々タイヘン!」-17
「ごめんね梓、私もついこの間知らされたばかりだから言うの忘れてたの」
椿さんは手を合わせて謝る。なんだかおっとりした人で、そこも対照的だと思う。
コホンと咳払いをして理恵さんが一歩前に出る。どうやら本題に入りたいらしい。
「えっと、椿さんはお父様の、藤一郎様の遺言書は何処にあるのかご存知ですか? 私、それを公開するように言われていまして……」
「すいません、私も何処にあるのか分からなくて、今も探しているんです」
「そうですか……なら私達も、探すお手伝いをいたしましょうか?」
挑むような笑顔の理恵さんに対し、椿さんは癒しの効果を持つ微笑で応える。なんだかストーブとクーラーに挟まれている気分。
「それはいい考えですね、ぜひお願いいたします」
「ちょっと姉さん……」
いくら弁護士とはいえ、そんなことを頼んでいいの? 多分、椿さん以外の人がそう思ったんじゃないかな。
続く