僕とあたしの夏の事件慕? 第一話 「お金持ちは色々タイヘン!」-10
「……何アイツ、カンジワル……あれもお手伝いさん?」
「真二叔父さんの甥なの」
「真二さんの甥なのに、なんであんなに偉そうなの?」
「さあね」
梓は興味なさそうに言う。多分、興味なさ過ぎて本当に知らないんだろうな。
「あれ、どうしたの? そんなところで突っ立って」
頭にクモの巣をくっつけて真琴が顔を出す。やっぱりこいつは頼りにならないわ。
「ねぇ、もう出ましょう? パパもこんなところに隠したりなんかしないわ」
「スポンサー様がそういうのだし、いくら真琴でも従わないといけないわよね? ほら、もう行くよ」
「うん、分かったよ……」
それでもまだ探したりないのか、名残惜しそうに蔵の奥を振り返る真琴。
まったく、こんな黴臭い場所の何処がいいのかしら?
「梓さん、後でもう一度蔵を調べたいんだけど、いい?」
「え、うん、いいけど……私はしないからね」
「あたしも遠慮する。黴の臭いが体に染み付いたら大変だし」
「それじゃ、今度は別荘を案内するわ、ついて来て」
梓は先頭を切って歩き出す。あたしもついて行こうとすると、真琴が神妙な面持ちで袖を引っ張る。