見返りは君でイタダキマス-4
「ミカさん?入んないの?」
バッと顔をあげて笑って見せても……今にも泣きだしたくてたまらなかった………
今だって、いつもなら直すさん付けが、なんだか私はただの家庭教でしかないって突きつけられるみたい。
さんざん都合よく振りかざし続けた年上のレッテルを今すぐ剥がしたくてたまらない。
なんで、なんで…私は楓より早く生まれちゃったんだろう。
こんなに好きなのに、好きだってわかってるのに………言い出せない言葉が苦しくて、吐き出したくてたまらない
どうやったら、………捨てられるんだろう
吐き出さず、言わないまま……どうすればこの気持ちは捨てられるの
楓の顔をみるだけで、今じゃ愛おしくて甘やかしたくて優しくしたい。
………それに、愛しまれたい、甘やかされたい、優しくされたい。
同じ気持ちでみて、求めて欲しい。
たった中学生の子に、私はこんなに気持ちを振り乱されてる。
もう私の中で楓は、オトコの子だから……
ギュッ。
「こら、ミカってばちゃんと聞いてんの?」
ふいに掴まれた腕の熱にも、私は逃げ出したくて離したくない。
………相反する気持ちがぐちゃぐちゃにかき回されて、いつまでも混ざり合いもせず消化もされない。
なのに――それぞれが主張だけはしてくる。
楓に掴まれたまま、しゃがみこんだ私を、楓はどんな顔で見てる?
もう呆れ果ててくれればいい。
そしたら諦められるから――そう思うのに、そんな顔してないでって願ってる。
見上げようとした寸前で頭に手をのせてきた楓は言った。
「なんかわかんないけど……大丈夫だから」
何がよ、何が…全然わかってないくせに
それでもどうしてだろう
――さっきからね
ずっと…ずっと辛かったのが楽になったの
掴まれた手は熱くも冷たくもない、心地いい温度で…
頭にのる手は少し力を入れて私に重たくないようにしてるのがわかる。
優しい手だった
楓はなんだかんだ言ったっていつも優しかった