見返りは君でイタダキマス-3
「仁科くん、じゃあまたね」
「んーじゃあ」
あー楓ってば、そんなぶっきらぼうで。
女の子はずっと楓の背中を見つめてるのに、潔いくらい楓は振り向かない。
あの子脈はない、なぁ…
そうやって思った瞬間、一緒に優越感を感じた自分を自覚した瞬間、恥ずかしかった。
あの子、脈ないな
って思ったらホッとしてなんか…見下してた
なに、私。
すごい……きたない。
甘酸っぱい視線で楓をみつめる女の子を、私は泥々した醜さでみつめた。
楓、好きになったら、どうしよう。
楓があの子を好きになったら……
あの子じゃなくても誰か、好きになったら?
私は本当に楓を恋愛の好きで好きにならないなんて……言えるの?
ふいに街中で見かけた光景は冷たい氷の棘みたいに私の胸に刺さってしまった。
…………明後日は、楓に会う日なのに。
どんな顔をして、会えばいいの?
ショーウインドウが反射して映る私は、嫉妬にまみれた顔でいて何かにすがるようだった……こんなにも女の顔をした自分を、自分でも知らない。
やだ、どうしよう
こんな私…楓にだけは知られたく、ない、よ…
今すぐ全部から逃げ出したかった。
こんなことが、そう思ってしまうくらいイヤだった。
それでも朝は来て、日はめぐるもので…
私は初めて楓の家の前で緊張してたりする。
「あれ、ミカさん?ごめん俺遅れた?」
とうとう迷いすぎて楓も帰ってきてしまった。
「いや!ううん!平気平、気…」
顔を向けた先には楓と、……あの子がいた。
「じゃあ、またな」
「あ!うんバイバイ!」
……………あ、私…
絶対今見せらんない顔、してる…やだ、やだ