Cure's CHOCOLATE-2
「うっ、ぐす…」
「コノ?」
「うえぇ〜ん…!」
ボーリングすらちゃんと出来ないなんてどんだけカス人間なんだ…。
「いやコノ、ここは泣くとこじゃねぇぞ。お前はこんなに面白いじゃねぇか!!ある意味、オイシイぞ」
お、面白い!?
アタシがへこんでんのに面白い!?!?オイシイって何よ!
そのグッジョブサインが、さっ更に、みっ惨めになっ…。
「うわ〜んっ!え〜ん!」
「ご、ごめんコノ!だって、ボール着地の時点でガーターだし、教えても直んないし、もうこうなったら天才的おバカだなって思って」
しかもおバカって言われたぁぁ!!
「ぅうわ〜んっ!哲希のバガァァァ!」
「激しくなった!」
「哲…希?」
「わぁ〜…ふぇ?」
綺麗な声…。
それはアタシにもちゃんと聞こえていて、泣き叫ぶのを辞めるには十分な出来事だった。声の方を見ると、女の子が口元に手を当てて立っている。
ショートヘアで綺麗な顔立ち、スラッとしてスタイルもいい。制服着てなきゃ学生だなんて分かんない。
そして、呼ばれた本人は不思議そうに呟く。
「静香」
はぁ?静香って何者だよ!
とは言えなかった。
だって哲希、アタシなんていないみたいにその子に行っちゃったんだもん。言い方変だけど、哲希の投げたボールがピンに向かっていくようなモン。
そんなんじゃ言えるわけないじゃん。
だけどその子の前で哲希は、緊張した笑顔を見せた。
アタシは見たことない。
どうしたの?とその子が首を傾げる。何でもない、哲希は苦笑いをして首を振った。
アタシの前じゃそんな顔しない。
哲希の顔を見ているうち、なんだか心がモヤモヤしてきた。
ひきつった笑顔なんて笑顔じゃない。
「今の、元カノだよ」
あの後、哲希がアタシにそう言っていた。
ような気がする。
だってアタシ、気が付いたら自分の部屋でボ〜としてた。どうやって哲希とバイバイしたかも分かんない。
「あの子が元カノ…」
ずっとずっと前、哲希に話してもらったことがあったっけ。
哲希は元カノさんに一目惚れで、大好きで、だけど急にフラれちゃって…。元カノさんだって哲希を好きだったんだよね?
どうして別れちゃったの?
元カノさんはきっと哲希を嫌いになったんじゃない。
じゃ、どうして哲希が悲しむようなことすんの?
哲希はフラれたからって嫌いにならなかった。大好きのまま、糸はプツッて切られてしまった。切られた糸はきっとまだ、哲希の中に残ってる。辛い思い出に変わってしまっているけれど。