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過激に可憐なデッドエンドライブ
【ファンタジー その他小説】

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過激に可憐なデッドエンドライブ-7

「…ごめんなさい」
 ビビリのロダンはすぐに詫びを入れた。先輩の威厳とかはゼロである。
 すると、整った顔を思い切り歪めてガンを飛ばしていたキリーの顔が一転して、さわやかな笑顔になった。
「ははっ、何言ってるんですか、ロダン先輩! ぜんぜん気にしてないですよぅ」
「…」
 ウソだ!
 その場にいるロダン以外の全員が心の中でそう思った。
「…ははは、ったくびっくりさせやふがってコイツぅ!」
 しかし、ロダンは空気が読めないので暑苦しくキリーにまとわりついて、その綺麗な頬に拳をグリグリしている。
「あはは、痛いですよー。辞めてくださいって! あはは、先輩、ロダン先輩、ホントにもう勘弁してくださいって! もう、マジで……潰すぞ」
 ぱっと手を離すロダン。その顔は真っ青だ。もう、ホントにチキンだなこいつ!
「ちょっと、早く行かないと遅れちゃうよ!」
 急かすさくらの声で窮地を救われたロダン。さすがに懲りたのか、その足取りは重い。
 それでも、三メートルほど歩くと急に顔を輝かせた。
「あ! 鴻池さんだ!」
 ロダンが巨体を震わせて熱い視線を送る先には、学園のアイドル鴻池皐月がしゃなりしゃなりと優雅に歩いていた。
 そのロダンの変わり身の早さに、キリーが壮絶な舌打ちをするのが聞こえた。
「へぇ、ロダンってああいうの好みなんだ?」
 場を和ませようと、話題を提供した。
 うちの学校は公立高校なのだが、歴史だけは古い。そのためかどうかはわからないけど、結構場違いな良家のお坊ちゃまやお嬢様が通っていたりするのだ。
 鴻池皐月もその一人だった。
「な、何言ってんだよ! そんなこと言って、狙っているのはテツの方じゃないのか?」
 さすがロダン。微妙な話題を振ってくる。
「えっ! そうなの?」
 しかし意外にもロダンの照れ隠しにさくらが反応した。
「いや、そんなことないって」
「ははは、怪しいなあテツ先輩」
 キリーまで乗ってきた。
「ホントだってば。昔から、ああいうお嬢様は苦手なんだよ」
 良家だとか名門だとかで威張っているだけの人間はうんざりするほど見てきた。そういう奴らはきまって俺を白い目で見るのだ。
「なんだ、そうだよねー。テツ君、元気で活発な女の子が好みだもんね!」
「え? う、うん。そうそう」
 そんなこと言ったかな、と思いつつもここはさくらに乗っておく。
「はあ、テツにはあの高貴な感じがわからないのかねー」
「結局狙ってるんじゃねえか」
「ば、ばっか違えって! 何言いやがるんだコイツぅ」
 ロダンが真赤になりながら俺の肩をばしばし叩いてくる。いつも思うのだが、ロダンの仕草に昭和の臭いを感じるのは俺だけだろうか。
「とにかく。お嬢様は苦手なの! わがままで傲慢そうなタイプ駄目なんだ」
「ふう、テツにはそう見えるのか…。なんていうかさあ、俺っちだけ特別なのかね。どうも鴻池さんって、俺っちにだけは優しいみたいなんだよね」
 そう言いながら遠くを見つめるロダン。
「…」
 そうなんだー、やるじゃん、ロダン。と言え! そう何度脳で命令しても口が動かない。俺はそんなに小さな人間なのか。
「はは、どうしたんだよ? 羨ましがるなって! あ、でもさくら、言っておくけど、鴻池さんが何を言って来ても、どんな過激なことを言って来ても、俺っちは断るから安心してくれ!」
「あ、そうなんだ、へー」
 妄想の入り混じったロダンの宣言に、さくらが無機質な感想を述べる。
「あ、ていうかロダンくん、名前で呼ばないでね」
ついでにトドメを差していた。
「…すいません。中川さん」
 なんだかロダンが哀れになってきたので、せめて元気に生きてくれと心の中で応援しといた。
 少し重くなった場の空気を和ます為にキリーに話題を振る。


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