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過激に可憐なデッドエンドライブ
【ファンタジー その他小説】

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過激に可憐なデッドエンドライブ-51

父の死を知り、部下の死体を見て、異世界に一人で飛ばされ、吸血鬼に襲われた。やっとの思いで庇護してくれる場所を得たが、夕子は油断ならない。少しでも弱さを見せれば、すぐに見切りをつけるだろう。あるいは、殺されるかもしれない。
それでも、テツヤに涙を見せるのは一番まずかった。
 強いと想っていた自分は幻想で、あまりにも弱い。そんな自分を隠す為に、必死に武芸を鍛えもしたが、こんな時に自分が女であることを思い知らされる。
 私は一体どうしたいんだろう。
 目を閉じれば、そこには笑っている父とキョウコの姿があって…。
「…リリム、レーアさん?」
 その時、聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。振り返ると一人の少女が、不釣合いなほど大きな男達を従えるようにして立っている。
 たしか、テツヤと一緒にいた…。
「中川さくらって言います。同じクラスの」
 その少女は、下を向きながらも、何度かこちらに目線を向ける。なかなか可愛らしい娘だった。
「ふふ、何度か会ったかな。たしかテツヤの恋人?」
 中川さくらの態度を見ていると、沈んでいた気持ちが少し軽くなった。
「そ、そんなこと」
「ちょっと待ったああああ!」
 突然赤くなる中川さくらを遮るように、大男が片手を上げて叫ぶ。
「てっちゃんの恋人はオレ。こいつは良くて愛人、悪くてストーカーです」
そ、そういう趣味だったのかテツヤ、だから私にあんなに反抗的で…。
「誰がストーカーよ!」
「このメス豚!」
 突然、中川さくらと大男が両手を組んで押し合う。うちの傭兵隊長に匹敵するほど身体の大きな男と、華奢な少女がなぜか均衡した力比べを繰り広げていた。
「二人共、何か聞きたいことがあったんじゃ…って聞いてないか」
 そんな二人を宥めるように出てきた男は、見るからに人の良さそうな顔をしていた。
 背格好はテツヤと同じくらいだが、その雰囲気は正反対と言ってもいい。
「ああ、僕は鳴滝京って言います。よろしく、リリムレーアさん」
 満面の笑みで差し出された手に無言で握手する。
 なんだか、この少年は好きになれない気がした。どこか違和感があるのだ。
「確か、テツヤの家にホームステイしてるんでしたっけ?」
 この学校の生徒にしては珍しくちゃんとした敬語を使う。考えてみれば、それが当然なのだが、またテツヤに怒られてしまう気がした。
「そんなに改まらなくても良い。正確には、テツヤの親戚の家で世話になっている」
「ああ、そうか。男女で同じ家に住むわけないよね」
 なかなか整った顔立ちの少年だった。
「ふふ、テツヤに何をされるかわからないからな」
 何かした時点で血祭りにあげるわけだが。
「はは、そうだね。ところで、そのテツヤは?」
 笑顔で痛い所を突く。わざとなのか、何も知らないのか…。
「…ちょっとケンカをしてしまってな。怒ってどこかへ行ってしまった」
 柄にもなく気を落としてしまう。鳴滝京は一瞬驚いたものの、すぐに笑顔で笑い出した。
「あはは。テツヤらしいや。気にすることないよ」
「そうか?」
「でも、意外だな」
「何がだ?」
 笑うのを止めた鳴滝京は、こちらを真っ直ぐ見つめながら言った。
「テツヤは本当に、不器用で、わがままで、口が悪くて…。だからすぐに誰かとケンカしちゃうんだ」
 全くその通りだった。鳴滝京は毒のなさそうな顔で、ばしばしとテツヤの欠点を挙げる。
「でも、女の子には気を遣うのか、とても優しいんだ。さくらなんかを見てるとわかるんだけど」
 ということは、やはり私を嫌っているんじゃないか。
「何故かな、あなたには飾らない自分を見せている。よほどあなたを気に入っているように見えるけど?」
 少年の表情は真剣そのものだった。よく真顔でそんな恥ずかしいことを言える。なぜか私が恥ずかしくなってしまった。


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