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過激に可憐なデッドエンドライブ
【ファンタジー その他小説】

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過激に可憐なデッドエンドライブ-26

「あれはコスプレです」
 ケ、ケンカを売られている。更に史上稀に見る勢いでケンカを売られている!
「まったく昨日はあれだけ忠告したのに、このアホはリリムレーアを危険な目にあわせたんですよ」
 やれやれと肩をすくめる男。
 昨日のアレのどこが忠告なんだよ。というか…。
「リリムレーアだと?」
 昨日のくすんだ色の髪をした女が脳裏に浮かぶ。
「はい。あれ、昨日言いませんでしたっけ? 忘れちゃったのかな。ああ、ユリアさん、この脳タリンに罰ゲームとしてダイオキシンを一リットル注射して」
 どんだけ命がけの罰ゲームなんだよ。
 それでも、ユリアという名前らしい少女は男のことを無視してじっと立っている。
「お前ら、あの女がらみかよ…」
 実家に行きたいと言っていた妙な少女。
「あの女呼ばわりとは、とんだサナダムシ野郎ですね。ユリアさん、無駄に健康な心臓を摘出してあげて」
 死ぬし。
 更に無視して立ち尽くす少女。不思議な赤い瞳でこちらをじっと見つめている。
「まあ、今日来たのはアナタに更なる念を押すためです。いいですか、アナタの敵はアナタ自身です。内なるもう一人のアナタに負けてはいけませんよ」
 真剣な表情で、どこかのスポ根漫画のようなことを口にする男。それを心配になるくらい肌の白い少女が複雑な表情で聞いていた。
「それに、リリムレーア、あの娘はアレで気が弱くてやさしい娘です。是非、力になってやってください」
 昨日の晩に、俺の髪を抜きながら悪魔のように笑っていた女を思い出す。
 どこがだよ…。
「…ヨシュアの再生能力は高い。昨日、あなたを刺した男はまだ生きている。気をつけて」
 ユリアと呼ばれる少女がどこか熱を帯びた表情で呟く。その顔は外見には似つかわしい大人びたものだった。
「あ、ああ。ていうかあんたら誰なんだよ」
 思わずユリアの忠告に頷きながらも、疑問を口にした。昨日の事件といい、リリムレーアといい、わからない事が多すぎるのだ。
「ああ、こちらはユリアさん。で、私は月に棲むドラゴンと書いて朧と申します」
 そのダサすぎるネーミングセンスにただでさえ寒い冬の気温が更に下がった思いがする。
「朧法師と呼んでください」
 坊主はコスプレだったんじゃないのか。
「…テツヤ君。これから数々の多難がアナタを襲うでしょう。そんな時には、見栄やプライドは捨てて、素直な自分に従いなさい」
「はあ?」
 これ以上多難になって溜まるか。またいい加減な占いしやがって。
「テツヤ君」
 更に真剣な表情になって顔を近づける朧法師。
「…ずっと気になってたんですが、アナタの後ろに立っている血まみれの女性はお友達ですか?」
「ひいい!」
 咄嗟に背後を振り返る。が、そこには誰もいなかった。
「ば、ばか。恐いこと言うな、よ?」
 ほっとして前を向くと、そこには誰もいなかった。
 急に背筋が冷えてくる。
 突然、静かになった保健室。
 休日で人気の少ない学校。
 すくっと立ち上がった俺は、急ぎ足でダルいはずの準備体操をしている部活へと向かった。

 休日の練習にもかかわらず、うちの部は全員出席だった。
 俺が屋上の扉を開けた時には既に準備体操はおろか基本練習も終わっていた。
「テツ、遅いぞ」
 部長モードの鷹山に怒られる。冬であるにも関わらず大分激しく動いたのか、鷹山は既に汗を流していた。
「悪い、ちょっと具合が悪くてな」
 俺の言うことを理解してくれたのか、キョウとさくらは鷹山達には何も言っていない様だった。それでも、二人は心配そうに俺を見つめている。


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