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過激に可憐なデッドエンドライブ
【ファンタジー その他小説】

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過激に可憐なデッドエンドライブ-15

「なんだ…」
「どうしたの?」
 素に戻るさくらの声も耳に入らない。
 目が自然と動いていた。
 絶対に見たくないはずの窓の外に。
 そこに広がっているのは一面の暗黒。
 明るい室内にいては、雲すら見ることができない。
 夜空。
 何もない。
「う、」
 いや、今何かが光った。
 物凄く小さな何か。
 一つ、いや二つ。
交差するように何かが光る。
「なんだアレ」
 目が熱い。潰れてしまいそうだ。
 それでも不思議なことに意識すればするほど、視界が伸びて行く。通常では有りえないほど遠くのことが鮮明に見て取れる。
 二つの何か。それは人間のようだ。
 人間が空中に浮かんで、激しく入り乱れている。
「いや、戦っているのか」
 両者は戦っているようだった。片方は剣のようなモノを持っている。フェンシングで使うような細身の剣だった。そんなことまで見て取れる。
そして、もう片方は、女…。
「うっ!」
 その人間が女だとわかった途端、頭が鋭く痛んだ。
 まるで小さな鉄の輪が食い込んでくるような痛み。
「ちょっと、テツくん? キョウくん、テツくんが―」
 隣でさくらが叫ぶ。
 大丈夫。そう言おうとするが、戦っている二人から目が話せない。
 剣を持った男の方が押しているようだ。
 素早い攻撃、防戦一方の女。
「あっ」
 その時、女の動きが止まった。そしてこっちを窺う気配がする。
 まさか、気付かれた?
 いや、そんなことをしていたら隙だらけになって―。
「バカ、後ろだ!」
 案の定、男の後ろ回し蹴りが女の腹に食い込む。
 落下していく女。
 それを笑いながら追う男。
 心臓が止まりそうになった。
 目の中で何かが弾けた。視界が真っ黒になる。
 そして感じる金色の輝き。
「その女に手を出すんじゃねえ!」
 自分でも驚くほど大きな声で叫んでいた。心なしか、手を置いていた厚い窓ガラスが振動したようだった。
 大きく肩で息をしながら、思わず喉が鳴った。
 俺が見つめる方向、ここから約一キロ先。
 空中に浮かぶ男が、こちらを睨んでいた。

 強い風が吹き付ける大空。
 月に照らされて男が宙に浮かんでいる。
「あはは! 最強と言われた竜族も大したことないね。ボクは強いんだ」
 両手を上げて高らかに笑うヨシュア。
「さあて、仕上げといきますか。待っててね、お姫様」
 剣を地上に向かって差す。その先には、今さっき落下していった獲物がいるはずだ。
 天界を統べる竜族の血。それは万病に効く不老不死の霊薬とも、竜の力が手に入る神水とも言われる。
 ヨシュアは由緒正しき血筋にも関わらず、力が発現しなかった。
でも、あの女の血を浴びれば眠っているボクの力が目覚めるはずだ。吸血鬼としての力が。
 ゴワッ
「うっ」
 刹那、全身を何かが通り抜けた。
 大気を震わせるほどの何か。
「なんだこの馬鹿でかい魔力は」
 振り返る先にあるのは煌々と光りに包まれた巨大ビル。
「このボクにケンカを売っているのか」
 せっかくの気分を台無しにされた気がする。


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