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過激に可憐なデッドエンドライブ
【ファンタジー その他小説】

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過激に可憐なデッドエンドライブ-12

「遅い!」
「お前、着替えるの早すぎ。そんなに焦らなくてもまだ店開いてるだろ」
「着替えも何も、私テツくんたちみたいに胴着着てないし」
「はは、そうだよね」
 今日は三人で旅行の予約をしに行く予定だった。
「なんだよ、お前らこれからどこか行くのか」
 ロダンが角刈りの頭をボリボリ掻きながら聞いてきた。
「えへへ、これから三人でデートなの」
 振り返って笑顔を見せるさくら。なぜ話をややこしくする嘘をつくのか。
 案の定、ロダンがショックを受けた顔をしている。まるで、腹を壊したゴリラのようだ。
「な、そんなうらやまし、じゃない、不埒な!」
 フラチて…。
「おうおう、見損なったぜお二人さん! こうなったら俺っちと勝負しな!」
 おうおうて…。
 時代錯誤なセリフを口にしながら、ロダンが俺たちの前に立ちふさがる。
「いいけど、俺やキョウと勝負したらお前、死ぬぞ」
 自慢じゃないが、空手部に入部してから一度もロダンに負けたことがない。
「うっ…」
 何が意外だったのかわからないが、ロダンが青ざめる。
「ちょっと、テツヤ、それは言いすぎだよ。せめて血尿が止まらなくなる程度じゃない」
「ひいっ、血尿!」
 真面目なキョウは、俺の間違いをリアルに訂正する。しかし、それが更にロダンを追い込んだ。
「そんな、先輩方の手を煩わせることありませんよ! ここは僕がこのフナ虫野郎の息の根を止めて…」
 なぜか後輩キリーもロダンに追い討ちをかける。キリーの中での強さランキングは、さくら、その他の空手部員、アリンコ、ミジンコ、トイレットペーパーの芯、ロダンらしい。
「ち、ちくしょう! そんなので俺っちはびびらないぞ」
 真っ青な顔でロダンが凄む。筋骨隆々の大男なのにちっとも怖くなかった。
「うおおおお!」
 ずしーんと足を踏み鳴らして構えるロダン。
「せいっ!」
 盛大な気合と共に繰り出されたのは、ロダンの筆箱とハガキだった。
「なんだよ、それ」
 意味が分からず聞いてみる。
「ふはは、お前が不幸になるように不幸の手紙を百枚出す、どころか、今この場で百枚書いてやる! 喰らえ! とりゃあ! 死ね!」
「…ロダン君」
 勇ましい怒声を上げながら、せっせとハガキを書くロダン。
 それを見たキョウが、そのあまりの情けなさに涙ぐんでいる。
 大男が地べたに正座して、せいや! とか言いながらハガキを書いている。
もはや哀れを通り越して無気味である。
「おい、やめろよ、マジで怖いから。悪かったって…」
「ふはは! 謝ったって、もう遅い! 俺っちのさくらにちょっかい出す奴にはこのハガキをこのまま送りつけてやる! 百枚書いてやるぞ! 夜なべしてな!」
 なぜか夜なべを強調するロダン。
「ロダン君、ごめんってば。駄目だよ、このままじゃ腱鞘炎になる上に風邪引いちゃうよ!」
 場違いな突っ込みをするキョウ。
 そんなキョウのボケに反応できずにただ立ち尽くす俺。
「何が俺っちのさくらじゃボケ! 先輩が困ってるだろうが! アパラチア山脈みたいな顔しやがって!」
 どんな顔だよ。
果敢な男キリーが壮絶な蹴りをロダンに入れる。しかし、色んなものに鈍感なロダンはキリー程度の攻撃ではびくともしなかった。そして更にその背後で川田がなぜか興奮した表情でこちらを見ていた。


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