伊藤美弥の悩み 〜初恋〜-15
シャワーを済ませた二人は、服を羽織って瀬里奈の部屋に行った。
部屋に入った紘平は、その内装のゴージャスさに驚く。
一般家庭の高校生の自室の中身には絶対ふさわしくないと、紘平は思った。
「うっわ……何やねんこの部屋」
決まり悪そうに、瀬里奈は弁解する。
「不倫相手が……こういう好みだったの。別れてから、家具を売り払って元に戻そうかとも思ったんだけど……居心地が良くて、結局そのまま」
紘平は、肩をすくめた。
「……ま、この部屋が合うか。どこもかしこもゴージャスにできとるもんな、瀬里奈は」
「……ッ!」
いきなり耳元に囁かれ、瀬里奈は狼狽する。
「不倫相手がどうこう言うより、ジブンこういう趣味あったんちゃうん?」
「そう……かも」
狼狽した事を悟られないようにしながら、瀬里奈はベッドに横たわった。
「もういいじゃない……来て」
紘平は喉を鳴らし、瀬里奈の隣へ行く。
そして……瀬里奈と、キスをした。
「……なあ」
唇を離した紘平は、正直に告白する。
「たぶん……満足、させられんで」
それを聞いた瀬里奈は、きょとんとした顔になる。
「何で?」
躊躇った紘平だが、結局告げた。
「その不倫相手とは俺、経験がちゃうやろ?たぶん、満足……」
皆まで言わさず、瀬里奈は指を当てて紘平の言葉を遮る。
「あたしは、好きな男とそういう関係になりたいの。そういう関係になるのが目的であって、気持ちいいの二の次よ」
瀬里奈は、紘平を見上げた。
「何度もシてれば、そのうちお互い満足できるようになるわよ」
そして、ふと笑みを浮かべる。
「紘平……あんた、初めてじゃないのね」
「な、何でや?」
うろたえる紘平に、瀬里奈は言った。
「そんな事を聞けるくらいに余裕があるもの」
瀬里奈の目が、思案に沈む。
「あれ……?それじゃ、それはいつだったの?五年間、美弥に操立ててたんでしょ?」
そのツッコミに、紘平は視線を逸らした。
「大阪いる間にな……」
瀬里奈の瞳が、剣呑に光る。
「それじゃ何?美弥には高崎君の事を浮気呼ばわりしといて、自分は平気で他の女とヤッてた訳?」
「ちちちちちちょっと待ってえや!」
その場にいなかった人物から当事者しか聞いていない事を言われ、慌てた口調で紘平は瀬里奈の言葉を遮った。
「瀬里奈、ジブンどこまで知っとるん?」
瀬里奈は、ぷいとそっぽを向く。
「高崎君から聞いたわよ。色々とね」
ぅあ、と紘平は呻いた。
「あたしとあんたがフェアに付き合えるようにって」
何となく、龍之介が瀬里奈へ余分な事まで教えた気がする。
「あれは……不可抗力、やねん」
紘平は視線を逸らし、弁解を始めた。
「……千春の事は、聞いとるやろ?」
「うん」
「二、三年前になるかな……千春から、告白されてん。もちろん、断ったで?少なくとも美弥の事を確かめん限りは、納得いかんかったからな」
紘平の声を聞きながら、瀬里奈は瞼を閉じた。
説明するためには仕方がないとはいえ、紘平の口から他の女の子の事を聞きたくはない。
「丁重に断ったんやけどなぁ。千春は納得いかんかったらしくて、それからしばらくして……」
ふ、と紘平はため息をついた。
「呼ばれて部屋に行ったら、その……千春がおった」
口調の歯切れが、妙に悪くなる。
ピンときた瀬里奈は、紘平に告げた。
「裸で?」
何とも言えない呻き声を上げ、紘平は頷く。
「で、流されたのね?」
またまた呻き声を上げ、紘平は頷いた。
「だってなぁ……そういうのに興味が溢れとるお年頃の男の前に、裸の女の子が『さあ食べて』って差し出されとるんやで?」
喋ってから紘平は、まずい事を口走ったと気付く。
「ふ〜ん」
案の定、瀬里奈の目がすぅっとせばまった。
「浮気の何のと騒ぐくらいなら、今後はあんたと女の子が二人きりになる状況は作らない方が賢明ね」
紘平は、思わず目を逸らす。
「ま……そんな真似したくなくなるくらい、あたしに夢中になって貰えばいいのよね」
瀬里奈は笑い、紘平の唇を奪った。
軽いものではなく、舌を這い込ませるねっとりしたキスをする。
「う……!」
驚いてされるがままになっていた紘平だが、事態を理解するとすぐにキスへ応えた。
二人は、情熱的に舌を絡め合う。
「ふ……」
しばらくして唇が離れると、瀬里奈はやや潤んだ目で紘平を見上げた。
「もっと……」
キスをねだられ、紘平は生唾を飲み込む。
「瀬里奈……」
そして、再び口付けを交わした。
瀬里奈は積極的に舌を使い、紘平をたじろがせる。
しばらくキスした紘平だが、耐え切れなくなって唇を離した。
「あかん、キスだけで出そうや」
その言葉に瀬里奈はくすりと笑みを漏らし、ベッドに紘平を寝かせる。
「一回出して、落ち着きましょ」
「はいっ?」
紘平が問い返すより早く、瀬里奈は手の平をそこへ滑らせた。
するっと服を脱がせ、びくびくと脈打つモノに指を這わせる。
肉棒が柔らかな手の平に包み込まれたかと思うと、絶妙な加減で擦り上げられた。
「うひッ!」
紘平は悲鳴を上げ、腰をぶるっと震わせる。
「やめっ……でっ、出るで……っ!」
眉を歪めて抗議する紘平だが、体の方が正直だ。
いきり立ったモノは射精したがって、はち切れんばかりになっている。
「だから出してってば」
瀬里奈は当然の事ようにそう言い、肉茎を上下に扱いた。