伊藤美弥の悩み 〜初恋〜-10
ふーッ、ふーッ……!
しばらくの間、美弥が深呼吸する音だけが部屋に響く。
はぁっ……ふぅ……
美弥の呼吸が落ち着いてきたのを聞き取ると、龍之介は体位を変えた。
ゆっくりと、美弥を組み敷く。
発情中の龍之介としてはまだまだ時間をかけて鳴く様子を感じていたいのだが……受け入れてくれるパートナーが泣きそうな声で喘ぐのを聞いてしまっては、不満が残るが早く達してしまう以外に道はない。
一度でいいから美弥の体が腫れ上がるとか擦り切れるとか気絶するなんて事を考えず、一週間も足腰が立たなくなる程に激しいSEXに一日中耽ってみたいものだと、龍之介は思った。
贅沢な悩みだと自覚しているし、もしもそれを実行したら美弥に愛想を尽かされるかも知れないので、その放縦な願いは胸の奥底へしまい込む。
「ん……」
龍之介は美弥の唇へ、そんな自分勝手な願いを微塵も感じさせない優しいキスを落とした。
そして美弥の様子を窺いながら、慎重に腰を動かし始める。
ねぢゅっ、ぐぢゅ、ぢゅっ……
淫道を撹拌すると、興奮を煽る何ともいやらしい音が響いた。
「ん、んん、ん……!」
ねっとりしたキスをしながら、龍之介は美弥を鳴かせる。
「ん、はぁ……あぁん!」
唇が離れた途端、艶めかしい声が美弥の口から漏れた。
声を妨げるモノがなくなったので、飛び出してきたのである。
龍之介は、美弥をイかせるべく腰を使い始めた。
龍之介は巧みに緩急をつけ、絶妙な収縮で自身を蕩けさせる蜜壺の中をたゆたう。
ぴったりと肉棒に吸い付き、咥え込んで纏わり付く潤んだ肉襞の感触が堪らなかった。
――完成しかけてはいるがまだ成長途中にある美弥の淫部は、以前無理矢理経験させられた女性のそれと較べると、幾分か生硬さが残っている。
体が完成した美弥を抱いた時……つまりはこの生硬さが消えた時はどのような具合になっているのか、今から楽しみだった。
「ん、はぁっ……あ、うぅ!!」
一際高く鳴いた美弥の全身が、ぶるぶると震えわななく。
「いいよ美弥。イこう」
龍之介は、美弥の耳元に囁いた。
美弥がイけるよう、龍之介の腰使いに優しさと激しさが増す。
「んぁっ、あああっ……くぅ、ああっ!!」
不意にしがみついてきた美弥の淫裂が、龍之介を最高に締め上げた。
「……っく……!」
龍之介は一声呻き、美弥の中で子種を放つ。
一滴残らずその中へ注ぎ込むと、龍之介は美弥を抱き締めた。
「あちゃ〜……ほんっきで間に合わないでやんの」
今何時か確かめるべく時計を見た龍之介の口から、そんな呟きが漏れ出た。
時刻は今、正午近い。
疲労してすぴすぴ眠る美弥の枕元へ『ちょっと出てくる』と書いたメモを置き、龍之介は家を出る。
――行き先は、学校。
メール着信の音が鳴ったので、紘平はさっそく携帯を開いた。
そして、眉を寄せる。
「……しゃあないか。責任は、取らんとな」
誰にともなく呟いた紘平は、クラスメイトに声をかけた。
「お〜い。俺、授業サボらして貰うで〜」
あちこちで了承の声が上がるのを確認し、紘平は教室を出る。
向かうのは、校舎裏。
そこで、龍之介は待っていた。
瞳を剣呑な色で煌めかせ、紘平を睨め付ける。
「呼び出した用件は、当然分かってるんだろうな?」
アクセントをつけて『当然』の部分を強調する龍之介に対し、紘平は頷いた。
「……ああ」
龍之介の双眸が、冷気を帯びる。
「なら、覚悟するなよ」
そう宣言し、龍之介は間合いを詰めた。
どぶっ!!
紘平の腹に、強烈な一撃が食い込む。
「ぐぶっ……!」
「覚悟なんてするな。美弥が味わった苦痛を表現するには、この程度じゃ生ぬるい」
龍之介は、めり込んだ拳を離した。
拳に、縒った新聞紙が巻かれている。
あいにくと拳を保護する物が手元になかったため、ある程度の柔らかさを持つ新聞紙を縒って手に巻き、紘平を百パーセント近い力で打ち抜いても拳を傷めないための保護具にしたのだった。
「覚悟なんてするな。そんな事をしたら防御態勢ができて、こうして殴る意味がなくなる」
淡々と喋りながら、龍之介は容赦なく紘平を殴り付ける。
紘平は敢えて、それを受け入れていた。
顔を殴られない辺りに陰惨さと龍之介の怒りが際立つと、紘平は思う。
重い打撃に耐えかねて、紘平は膝をついた。
それを見た龍之介は、不満そうだが殴るのを止める。
「僕としてはまだ足りないけれど……未遂だし、これで勘弁してやる。立て」
胸倉を掴んで立たせるととどめの特別重い一発を腹に打ち込み、龍之介は紘平を開放した。