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初雪と朧月
【初恋 恋愛小説】

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初雪と朧月-1

『吸血鬼が出たらしいよ』
クラスの女子の誰かが言った。
中学のやたらと騒がしい昼休み、ひとつのグループの会話が偶然耳に飛び込んできた。
しかし、そんな事は関係なしに俺、河東 勝明(かとう かつあき)は本を読み続けた。
「狼男らしいぞ?」
どうやら、数少ない友人(あくゆう)の淀川(よどがわ)も参加したらしい。
「そりゃあ満月だから出た噂だろう」
「でも被害者が居るらしい」
「今じゃ普通の日にも出るらしいぞ」
俺自身は中学生も後半になりオカルトは、失望と共にもう飽きた。
物理的な距離に関わらず、遠い世界の話は進んでいった。しかし、
「また、わけわかんない本読んでないで話にまざったら?UFOとか幽霊とかこういうの好きじゃなかったけ」
よく知った顔が顔が話しかけてきた。
彼女の名前は中島 奈津美(なかしま なつみ)
幼稚園児の頃から話して喧嘩して遊んでいる"友達"だ。
「よぅ。オカルト好きは昔の話だよ。今はこっちの方が興味深いな」
そう言いながら、手にしたC言語の入門書を閉じて表紙を見せる。
「何それ外国語?」
「違うよ」
入門書を自分の机の上に置いて、グループで話やすそうな他人の机の上に腰を下ろす。
「あ、そう言ってこっち来るんだ」
矛盾した行動を中島が笑う。
「暇だからな」
どうにも、中島に笑われると困ってしまう。
「河東も聞いたことあるだろ?狼男の噂」
ナイスタイミングの淀川が問いかけに感謝の意を込めて、某教授よろしく
「確か、逃げ出した大型犬を見間違えって話だっけ?」
と否定的な回答を返してやった。
「あぁー!?またそんな事言って、夢が無い奴だな」
「初雪が降るか降らないかの日に怪談話する奴は季節感が無いな」
「頭ん中が常ナツの奴が季節感何てどの口で言うんだ」
コイツは俺の弱みを知っている。
「そう言えば今日は満月だってなぁ」

まだまだ残りのある昼休みをすり潰すように話は進む。

「それに今日の予報は雪じゃないか」
どうにも、昼休みも終わりに近付くと話しがおかしくなっていた。
また、淀川が余計な事を言ってくれた。
吸血鬼か、狼男か、タダの変態か、夜の町を歩こうというのだ。
「今日が満月だって言ったのは勝明だぞ」
口は災いの元とはこういう事か。
「何?ひょっとして怖いの?」
ニヤリと中島が聞く。
誰だってかっこ悪い評価はされたくは無い。
「下らないと思っただけだ。肝試しだろ?」
深く考えないで即答してしまった。
ハッパをかけられた事に気付いたのは後の事だ。
キーンコンーカーンコンー
退屈な授業の開始をチャイムが告げる。
教師が発する催眠音波に、昼飯を食べて腹の膨れた俺が負けたのはそれからすぐの事だった。
体育も理科(好きな科目)も無く退屈な授業の時間は長かった。
放課後を遥かに過ぎた真夜中に通っている中学校校内に俺は居た。

下らないと思っても、参加してしまった。


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