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初雪と朧月
【初恋 恋愛小説】

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初雪と朧月-2

"俺は中島に惚れている"
ここに居る理由は間違え無くそれが原因だろう。
だから、断れずにノコノコと来てしまった。
でも、誰かに居る理由を聞かれたら"暇だから"としか答えない。
知っているのは一人の親友くらいだろう。
何にしても本人には気付かれたくはない。
この腐れ縁的な友人関係が一番良いと思っているからだ。
なのに、少しでも会いたいと思ってしまう。
救いようが無いほどに情けない。
ストーカーにならないように自分を抑えるのに精一杯だ。
ガサガサガザ
自己嫌悪を遮って誰かが来た。
二番手に来たのは淀川だった。
「おぅ。抵抗してたわりに早いな。さすが、ギロロ伍長」
コイツは、俺の秘密を知っている。
「つまらない冗談だな。暇だからだ」
定番化した言い訳に親友は軽く笑いながら相槌を打つ。
それから、"肝試し"の参加者が揃うまで時間はかからなかった。
「肝試しとか言う人が居るので、クジを用意してみました」
趣向を凝らしたつもりなんだろう。
「定番の二人一組で廻るというのはどうだろう?」
まったく芸の細かい奴だ。
しかし、反対する理由もなく反論する奴は誰も居なかった。

コースは目の前の林を抜けて学校に隣接して建っている神社を抜けて戻ってくるという簡単なモノだった。
しかし、普段通っている中学の近所とは言えド田舎の夜は都会の夜と比べものにならない程に暗い。
満月の夜といえど林の中はライト無しには道も分からないだろう。
見慣れた場所にもかかわらず、林にしろ神社にしろ未知の恐ろしささえ感じる。
それぞれにクジを引いて、組になってスタートする。

黙って歩く事に耐えきれなくなって口に任せて会話をする。
「満月の日は犯罪者が多くなるという話を聞くけど、しっかりと誰かが統計を取った人が居る訳ではないらしいよ」
…それなのに、俺は満月の夜に犯罪者になってしまいそうだった。
「へぇ〜。割とそんなイメージあるのにね」
隣に居る女子に抱きつきたいそんな衝動に駆られる。
「でも、やっぱり満月って雰囲気あるじゃない?」
そう返事をしてくれてたのが肝試しのペア…中島だ。
「あぁ、そうだな。お?雪だ」
空からシンシンと粉雪が降り注ぐ。
「初雪だぁ」
両手を広げて空を仰ぐ中島の姿はどこか芝居がかっているようにも見える。
月光に照らされた雪がキラキラと光って、同じ様に月光に照らされた少女を彩る。
「キレイだ…」
理論も躊躇いも何もなく勝手に口が動いていた。
「ん!?」
驚きに目を開いた中島がこちらに振り向いた。
ヤバい聞こえたのか?
「雪が綺麗だなんて、良いこと言うじゃん」
どうやら勘違いをしてくれたようだ。
ホッとしたような…少し残念のような…
「明日は雪合戦だな」
そして、俺はまた話をはぐらかす。
「どうせなら、積もるといいね」
雪を喜ぶのは子供の会話だと分かっていた、それでもそれが何とも居心地がよかった。
林の入り口に入る直前のここで、心臓の鼓動が異常に高いのは原因は吊り橋効果かそれとも…。

林の中で先を照らしてくれるのは、手元のライトただ1つだけだった。
木に遮られて満月の光も、降り始めた初雪も届かない。
だからと言って現実に幽霊や狼男が現れるワケが無い…
しかし、突然目の前で朽ち木が倒れた。
ライトの光に照らされて動物的な眼がキラリと光のが見える。
「うぉ!?」
「きゃあ!?」
しかし、落ち着いた時に見えた真実は可愛らしい物だった。
「ありゃ?タヌキか?」
そう、木が原因は幽霊でも狼男でもない、タダの小動物…タヌキだ。
「幽霊の正体見たり枯れなんとかだな」
後ろを振り向くと中島がペタリと座り込んで俯いていた。
木が倒れた瞬間に何か飛んだのか?動いた時に足でも捻ったのか?
木が倒れた瞬間並みにに焦る。


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