SFな彼女 -Science Fiction編--6
3. ウレシイ、でもフクザツ
さよなら俺の暗黒木曜日。
嫌なことばっかりだと思っていたら、いいこともあるじゃんか!
俺は鼻歌まじりにシャワーを浴びていた。
これからのことを考えながら、念入りに頭を洗う。
つーか、これってマジで夢じゃないよな?
こんなオイシイ話、何回生まれ変わったってないだろう。
何か裏がある気がしながら、俺は小さくなった石鹸に手を伸ばす。
タオルに石鹸を擦りつけ、背中を洗っている途中に妙に不安になる。
(いや、気のせい気のせい!)
こういうのは気の持ちようだ、うん!
これから楽しいことが待っていると俺は自分に言い聞かせ、更に念入りに身体を洗った。
「ごめん、待った……って!」
髪を拭きながらユニットバスから上がると、ユズリハは俺のベッドの下から引きずり出したであろうAVを手にしていた。
俺は慌ててユズリハの手からそれを取り上げる。
「あのね、これは隠してるの!」
「知ってますよぉ。この国の男性は大抵寝台の下にそういうものを隠しているって」
そんなことを笑顔で言われましても。
視線をAVに落とす。女子校生モノと眼鏡のお姉さんモノだ。
ま、これはまだ健全な方か。そう思って俺は多少安堵する。
杉山に借りた鬼畜モノとか見られたらシャレにならないからな。
「って、うおお!?」
胸を撫で下ろしていた俺がそんな妙な声を上げたのは、ユズリハが俺の股間に手を伸ばしていたからだった。
「ユ、ユズリハ! シャワーは!?」
「な、何だかそれを見ていたら我慢できなくなっちゃいました」
顔を上気させ、熱く吐息を吐きながら俺を見上げるユズリハ。
おいおい、こいつは反則だろ。
思わず顔がにやける。
「マサキさま」
ユズリハは、ふと俺のスラックスを下ろしながらこんなことを言った。
「あなたが"したい"女性っていますか?」
「?」
妙なことを言う。
俺はユズリハの言葉に首を傾げた。
「わたしは自分の相貌を自在に変えることができるんです。お望みなら、誰にでもなってみせますよぉ」
俺は思わずごくりと息を呑む。
(それってつまり、俺の望む女とヤレるってわけだよな?)
彼女が身体を変化させられることに驚いたわけじゃない。
彼女がそう言ったことに驚いたのだ。
(普通女って、セックス中に自分以外のことを考えられたら嫌じゃねーのかなァ)
そこが人間と彼女との違いなのだろうか。
快楽だけを得たいっていう――。
(いや、それは俺も同じか)
なんて、俺は自嘲する。
「お望みって言われてもなァ」
「当ててみせましょうか」
「え?」
「あなたの心の中で、あなたが望む女性の姿になってみせましょうか」
ユズリハの言葉に、俺は笑った。
「いや、いくらなんでもそれは無理だろ?」
「試してみないと分かりませんよぉ」
ユズリハはそう言い、俺の胸にそっと手を当てた。
何だろう――じわり、と俺の身体の中が熱くなっていく感覚。