DEAR PYCHOPATH−1−-4
それを見始めたのは、今からちょうど一週間前。その日はどうしたものか、体中に何ともいえないだるさを感じた僕は、家にたどり着くなり深い眠りへと落ちていった。そしておかしな話だが、夢の中で目をさますような奇妙な感覚を覚え、僕は再び目を開けた。そこは風の吹き抜ける、絶景だった。どう考えても日本じゃない。
それだけは確かだ。また、その世界での僕は、ヘンリーとよばれている外国人だった。歳もそんなに若くはない彼の隣には、いつもかわいらしい女の子がついていた。
名前はベッキー。本当に、人形のような顔立ちの子供なのだが、彼女もまた、ヘンリーと同じく反吐が出そうな程の凶悪殺人犯なのだ。
そしてその夢は、今日まで、まるでエンドレステープのように流れては僕を苦しめた。何か、現実の世界と夢の世界、二つの人生を生きているようだ。ふと、重たい頭をもたげ、壁にかけてある時計へ目をやると、時針がそろそろ二時になろうとしている。僕は慌てて立あがり、汗の染みたTシャツを洗濯機の中へ放り込んだ。まずい!今日は午後から約束があったのだ。あらかじめハンガーにかけて、用意しておいたチェックのワイシャツに手をとおし、ひざの破れたジーンズへ足をとおす。
チラリと鏡に顔を映し、「よし」と、小さく頷く。そして少しよろめきながらも、財布を片手に、玄関まで走った。遅刻だ!完全に大遅刻だ!約束の時間は一時。近くの公園のベンチで待ち合わせのはず。
「くっそー!」
僕は悪態をつきながら、靴のかかとをつぶしたままで外へとび出し、鉄の階段を、一つとばしで降りていった。