「demande」<槙惣介>-24
「え、マジ?当たりなわけ?」
「ちが…!」
「うはは!マジでー!?」
「だっ、だから違うって言ってんだろ!」
「いーや、その反応は間違ってないとみた!」
「男に殴られてたら、こんな傷一つで済むわけないだろーが!」
「じゃあ女に殴られたとか!?」
なんっっで…この人は……っ!
惣介もだんだん意地になってきて、何がなんでも言いたくなくなってきた。
なんとか話題をそらそうと考えていたら、後ろでドアの開く音がした。
「ただいま戻りました…」
翔太朗が仕事を終えて戻ってきたとこだった。
なんだか元気がない。
「よ、翔太朗。お疲れ。何ショボくれた顔してんだよ。あ、惣介の武勇伝聞いてけよ!」
優斗はニヤニヤしながら、惣介の頬を指差した。
根も葉もない…しかも尾ヒレのついた適当な話を翔太朗に聞かせるつもりだ!!
「だっ!!誰が話すかバカヤロウ!!」
顔を真っ赤にしながら惣介が優斗を羽交い絞めにする。
これ以上この話題を、この中で広めてほしくなかった。…いろんな意味で…。
「あだだだッ!!痛えっ!コイツさ、今日の依頼人に殴られたんだってよ!!」
「たっ…ただ殴られたんじゃねーよ!!これはっ男の勲章ってヤツだ!!」
「ハイハイ。どうせ嫌がるプレイでもしたんだろ?」
「んなことするか!!」
「じゃあ『僕を殴ってぇ〜』って趣味があんのか?♪」
「てっ、てめ〜〜〜〜ぇっ!!」
「二人とも黙れ!!」
要さんが帰宅し、俺たちは一喝されてビクっとなる。
「何をしてるんだ!いつも云っていることを忘れたのか?普段から紳士的に振舞うように と
教えてあるだろう!優斗、お前は何年ここにいるんだ?そもそも紳士の役割を理解してないから…」
…優斗さんを中心に、俺たちはたっぷりお叱りを受けた。
そのあと、優斗さんは自室に戻され、俺だけが残った。
「…どうしたんだ、その傷は」
ずっと気になってたという感じで、要は惣介の頬を指摘した。
さっきの優斗さん相手とは訳が違う。…きちんと説明しなければ…。
俺は―、時々彼女への想いを織り交ぜながら、殴られた経緯を話した。
かなり長くなってしまったが、要さんはじっと受け止めるように聞いてくれた。
すべて話し終えると、ちょっと考え込むような間があった。
…怒らせたんだろうか…。