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「demande」
【女性向け 官能小説】

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「demande」<槙惣介>-21

「だから謝らないでってば。…嬉しかった」

そういって、キュっと抱きつきを強めてくる彼女は本当に嬉しそうだった。
惣介は額にキスをして、ありがとう、七香 と告げた。

これでも、一夜限りで終わらせろというのか―――
もう二度と会えないなんて、ありえねぇ…
demandeの規則に沸いてくる怒り――
今まで、どんな人と会ってもこんなこと思わず、家を出た瞬間は
「よし、終了」くらいの切り替えができていたのに…。

やり場のない怒りが自然と眉間にシワを寄せていた。
七香を抱く手にも力が入り、七香は怪訝そうな顔に不安を覚える。

「どうしたの…?」

見上げた彼女の顔は心配そうだった。
俺の表情が悪かったせいだろう…。
そういえば…。彼女はこの規則を知っているのだろうか?
自惚れではないが、彼女がもし「呼べばいつでも会える」と思っていたら…。

訊くのも、説明するのも嫌だったが、惣介は辛さを堪えて尋ねてみた。

――――その会話は15分にも及び、最後には七香が泣きじゃくってしまった。



「なんで…っ。せっかく…私…惣介のこと…っ!」

「…申し訳ありません」

「さっきからそればっかり…っ!あなたにとってはただのお客の一人だもんね。
そうやって取り繕っていれば、やり過ごせるって思っているんでしょう?
私の気持ちなんか…わからないよ……っ」

「そんなわけないでしょう!!」


惣介の声に少し震えたが、彼の表情を見た途端、涙腺が全開に緩んでしまった…。

「俺だって…っ、こんなバカげた規則がなきゃ、どんなにいいかって思ってる!
どうして二度と会えないのか意味わかんねーし!…俺が…七香の気持ち…
わからないとでも思ってたら…大違いだよ…。…………好きなんだから!!」


…それでも、状況は変わらないし、別れまでの時間は迫ってくる。
七香は…初めて好きになった人を見送らなければならない辛さを懸命に堪え、
惣介は…愛しさや、切なさ、寂しさ、怒り、困惑、疑念…これらと必死に葛藤していた。
抱き合える時間はあとわずか―――
できるだけ触れていたい…。

―――その想いは同じだった。


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