僕らの日々は。〜聖夜に駆ける男達〜-1
『さて、今週のヒットチャート第一位は、○○○○の新曲。聖夜の恋人達の想いをしっとりと歌い上げたクリスマス・ソング……』
「なんかさ、あれよね」
「どれさ」
本日は、12月24日。
いわゆる一つのクリスマス・イヴ。
「クリスマスソングって、キリストさんに関係がある歌の事だと思うんだけど。最近はクリスマスが舞台なら何でもいいのかしら?」
テレビから流れる最新のヒットチャートを聞きながら、一葉はそんな疑問を口にした。
「まぁ確かに。前にも言ったけど、日本では『クリスマス』っていう事自体を祝ってる感じだから」
「納得いかないわ。……あ、それとさ。前から疑問だったんだけど……」
「今度は何さ?」
指先でスプーンをくるくると回しながら、さらに疑問を連ねる。
「なんでクリスマスよりも、前日のイヴの方が盛大にお祝いするのかしら?」
「何でって、そりゃ………………何でだろ?」
「不思議よねぇ」
「確かに。……ま、今の僕たちが言えた義理も無いけど……ね」
そう答えて、僕――沖田 春風は肩をすくめた。
現在12月24日、午後8時。
一葉の家にて、夕食兼クリスマスパーティーの真っ最中なのである。
ちなみに二人で。
今夜はウチの母親(ちなみに教師である)が忘年会で家にいなかったため、一葉の家の夕食に呼ばれたのだ。
ウチは父親が海外で働いていて常に家にいないため、夕食に呼ばれる事自体は昔からよくある事である。
……で、いつもと違う事もいくつか。
一葉の弟の陸斗君は友達の家でクリスマスパーティー。
一葉のお父さんは、これまた会社の忘年会。
……んで、一葉のお母さんはというと、僕が家に来るなり『ごゆっくり〜♪』とか言いながら出かけてしまった。
そんなワケで、まぁいいか、とりあえずご飯にしよう……と二人で夕食を食べていたところである。
と、一葉が思い出したように口を開いた。
「そうそう、クリスマスソングって言えばさ。『きよしこの夜』ってあるじゃない?」
「うん。定番だよね」
「私、ずっと思ってたの。『きよしって誰よ?』……ってね」
「いや、人の名前じゃないから。『聖し』と書いて『きよし』だから」
某若手演歌歌手じゃあるまいし。