僕らの日々は。〜聖夜に駆ける男達〜-4
「……そこは、アレだよ」
「どれよ?」
「皆でお祝いをする楽しい日は、一日よりも二日がいいっていう粋な計らい」
「………………」
「……ダメかな?」
「……理由になってないわよ、春風。ま、でもそういう事にしといてあげるわ」
「はは。そりゃどうも」
一葉は一つ頷いて、納得したような顔をした。
「ま、でもそういうものなのかもね。『前夜祭』って言葉があるくらいだし、前日の夜はお祭り気分くらいがちょうどいいのかもね」
「そうそう。楽しい日は多ければ多いほど良い……だろ?」
「ん。そうよね」
言って、満足気に微笑む。
……多少自分でも苦しい理由付けだとは思ったが、一応成功したようだ。
内心で安心。
「……あ、そろそろケーキ食べる?」
「ケーキあるんだ?」
「もちろん。お祝い事には欠かせないわ」
言いながら、一葉は冷蔵庫へ向かう。
帰って来た一葉の手には、オーソドックスなブッシュ・ド・ノエル。
机に置いて、切り分けて…………ん?
「あれ、一葉。何で三切れ?」
「三人分だからよ」
「三人……?」
三切れをそれぞれお皿に乗せ、その中の一つを手に一葉は立ち上がった。
向かった先は……
「あぁ、なるほど」
「そういう事よ。誕生日の主役にもケーキがないとね」
言って一葉は、神棚にお皿を置いた。
「キリストさんも神様だし、多分大丈夫よね?」
「ん、彼の誕生日祝いなんだし、今日だけは日本の神様も許してくれるでしょ」
だよね、と笑って、僕らは神棚を向いた。
「「ハッピーバースデー、キリストさん」」