私の存在証明B-6
「急に笑い出すなよ怪しい」
「思い出し笑いしちゃった。俊博さ…お父さんに負けない位怪しい?」
「どっちもどっち。二人とも不審者として通報だな」
二人で顔を見合わせて、それから小さく笑った。
「ねぇ奏太」
握る掌に少しだけ力を込めれば、奏太も無言のまま握り返す。
「私、奏太が現れるまで、私の存在を証明してくれるものなんて何もないって思ってた」
けれど、それは違った。
「本当は沢山の周りのもの達が、いつも証明してくれてたんだね」
例えば、白い吐息。
例えば、伸びた影。
例えば、足音。
「奏太が居てくれたから、私を見つけてくれたから、やっとそれに気づけるようになったよ」
息を吐く、白い息が現れては消えていく。
街灯が二人を照らし、二つの長い影を作り出す。歩を進めれば、敷き詰められた砂利が音を立てた。
繋がれた手から、ゆっくりと二人の体温が混じり合う。
うん。
私はちゃんと此処にいるよ。
君の隣にずっとずっと。嬉しい時も悲しい時も、何があっても。
私は此処にいる。
end