ふたりだけのイヴ-3
アコは追いかけるように話しかけた。
「よく来るのね、ココ。」
「うん、日曜日ごとかな。
どうして?」
珈琲に砂糖を入れながら答えるトシ。
アコは、スプーンでカップをかきまわしながら、なおも聞いた。
「あのウェイトレスさんとは、仲がいいの?」
「えっ?!」
トシは、意外!といった表情を見せ、そして面倒臭そうに答えた。
「あぁ。
そうだな、つまみの量を少し増やしてくれるかな。
それだけのこと。」
「なんで英語を使うの?」
「英会話の練習さ。
彼女も、興味があるんだって。」
「フーン。
だけどあの人、トシに気がありそうよ。」
トシの言葉にかぶせた。
「へぇー、そうかい。
それは、それは。」
トシは、アコとのデートを楽しみたいという気持ちで一杯なのに。
こだわりつづけるアコに、少しうんざりだ。
「う、うーん。
顔を上げて。
好きなの?
あの人。」
しつこく聞き直すアコに、からかい半分で無造作に答えた。
「ああ、好きさ!」
と、今にも泣き出しそうなアコに気づき、
「めんご、めんご。
冗談だよ、アコが一番好きだよ。
でなかったら、ここに連れてくるはずがないだろう。
自慢しに来たんだぜ。」
と、慌てて言い足した。
「そう、そうよね!
私の方がいいわよね。」
アコは、パッと、顔を明るくし目を大きく見開いた。
トシは、お腹の底に暖かいものを飲み込んだ。
心底、可愛いと思った。
そしていつまでもこの可愛さいらしさを、と思った。
「そうだ、忘れてた。
はい、プレゼント!
ステキな少女に、このブローチを差し上げましょう。」
「まぁ、すてきなお花のブローチ。
これ、ポインセチアね。
ありがとう!」
満面に笑みを湛えるアコ。
そんな手放しの喜びように、トシは顔をほころばせた。
そして、
「あなたの窓辺に、青い鳥が」と、花言葉を添えた。
アコの感動は、頂点に達していた。
みるみる目が、潤む。
トシは、そんなアコの喜びように酔いしれた。
二人の話は弾み、アコは学校でのことを、トシは仕事場でのことを飽きることなく話し続けた。
アコは、トシにお話をした。
そして二人は共に、夢の世界に旅立つ。