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ふたりだけのイヴ
【ファンタジー その他小説】

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ふたりだけのイヴ-5

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「初恋」 〜ぶるう・マーダーラァー〜

人生に対する夢が消えたあ日、冬の荒々しい日本海に向かってとめどもない涙を流し我が身を憂え。
涙さえすぐに凍りつきそうな冷たい風。
一点の希望さえ生まれない冬の海を見つめながら、死という観念に囚われていた。

沖に夜光虫の青白い光を見つけた時、僕の心の不安・おののきは消えた。
と同時に、言いようのない暖かいぬくもりがよみがえった。
思わずその冬の海に飛び込み、夜光虫の光をこの手の平にのせたいと思った。

そこには、死という観念ではなく、生という真実があった。

初恋の人が嫁いでいく。
打ち明けられずにいたぼくから、去っていく。
朝の目覚め、あなたの夢から覚める。
正天の太陽の中に、眩しすぎるあなたを感じる。
沈みゆく夕陽が、あなたのシルエットを浮かび上がらせる。
体を横たえる時、あなたのにほいを思い浮かべる。

秋の夜長に、あなたからのふみを・・。

好きよ

そのひと言が、ぼくを暖かく包む。
けれど、あなたは嫁いでいく。
二十歳のあなた、十七歳のぼく。
社会人のあなた、学生のぼく。
ひと足先に、社会に出て行ったあなた。
学校という檻に、閉じ込められているぼく。

好きだ

便箋の中央のひと文字が、淋しさに震えている。
一歩が踏み出せなかった。
声を、飲み込んでしまった。

明日は、キリストさまの誕生日なの。
そんな日に式を挙げられるなんて、ステキよね。
世界中の人すべてに祝福されているみたい。

どうしてそんなことを言うの。
どうしてぼくにそれを言うの。
どうしてぼくを苦しませるの。

ぼくには呪いの日だ。
ぼくには責苦の日だ。
ぼくには地獄の日だ。


あの日の雨が、今、生命ちの糧となる。

口にしないサヨナラを、今、地獄の門で口にした。
形の無い 時間の世界へ旅立つ時
背中の翼が 呪わしい。


あの日の雨が、今、哀しみの水となる。

聞こえはしない夢を、今、地獄の門で聞いた。
色の無い 時間の世界へ旅立つ時
涙の膜が 呪わしい。


あの日の雨が、今、希望の光となる。

見えはしない愛を、今、地獄の門で見た。
音の無い 時間の世界へ旅立つ時
足かせの鎖が 呪わしい。


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