ふたりだけのイヴ-2
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=地獄変=
「いいのか?外に出て。
みんなでイブを楽しんでいるようだけど。」
「いいの。
私、みんなでバタバタ騒ぐより、トシと歩いていたいの。
それに、みんなの中で小さくなったトシを見るの、嫌だもん。」
「チェッ!
見くびってるナ。」
アコはファーコート、トシはダッフルを。
白い雪が、静かに舞い降りる。
降り積もる中、ふたり肩を並べて歩く。
アコからのプレゼント、大きなマフラーでふたりを包んで。
「冷えるな、今日は。」
「そうね、雪が降るかもしれないネ。」
白い舗道を、トシはアコの肩を優しく抱いて歩く。
アコはトシに体を預け、足が地についていない心地だ。
「あそこの喫茶店で、コーヒーとケーキでお祝いしよう。
すごくシックな店なんだぜ。
天井に光の弱いシャンデリアがあるんだ。
そしてな、ワンボックス毎にランプが壁にあるんだ。
ソファは、フンワリとしていて気持ちいいしサ。
床には、赤い絨毯が敷いてあるんだ。」
「ふーん、そうなんだ。
いいわ、行きましょう。
クリスマス・イブだもん、いいわよ。」
アコはトシの輝く瞳に酔いしれながら、自分に言い聞かせるように
呟いた。
”学校の先生に見つかれば、停学かしら・・”
二人は、
“大人たちが学生のくせにこんな場所にといぶかる、しかし時間と
いうものが解決してくれる世界”
恋の世界へのドアを押し、幸せの雲の階段を上がり、そしてひと気のないボックスに座った。
トシは、アコのコートを優しく畳み、トシのコートと同じくソファ
に置いた。
「うわぁ、ムードまんてぇん!」
「だろう、いいところだろう。」
二人の声は少し上ずっている。
「そうね。少し暗いけれど、トシだから安心。」
アコは力なく肩を落とし、ホッとため息をついた。
「どうしたの?
少しセンチメンタルになったのかな、アコらしくないぞ。」
「フフ、そうよ。
ちよっとおセンチになっちゃった。
だって、トシが優しすぎるから・・」
「だけどアコも、来年は高校三年生。
そして、大学入試・・・」
トシの沈んだ顔に気づいたアコは、明るい話題に切り替える。
が、ウェイトレスに邪魔された。
珈琲とケーキが並べられた。
そのウェイトレスの目に嫉妬に似た強い光を感じ、アコは小さくなった。
トシはそのウェイトレスにニッコリ笑いかける。
「Thank you!
Are you fine?」
「Of course!」
そして、トシが異世界に入る。