アンダー・ザ・スカイ-5
Epilogue(prologue)
麻衣は呆然とした。目の前には、勢いよく炎が渦巻いている。
―― どうして私だけがこんな目に合わなければいけないのか
けれど、これは断罪の炎なのかもしれない。神が私にくれた「死」というプレゼント。
私には守らなければならないものがある。
私と、このお腹の中の命を賭けても。
(あなた・・・)
麻衣は、紅く染まる家の中に飛び込んだ。
「おい、誰か中に入ったぞ!」
「消防車はまだか!」
意識は、朦朧としていた。体にもはや痛みは感じない。かつては二人の笑顔が絶えなかった居間で、麻衣は息絶えようとしていた。大の字に倒れた手には二つのコップ。これだけは燃やすまい、と。
そのコップを空にかざした。
熱さでどろどろに溶けてしまっているけれど。
紅く燃え上がったそれは、もう空色ではなくなってしまっているけれど。
あの誓いだけは。
遠のく意識。
あの空の下で、揺らぐ記憶の中で、彼は笑っていた。
麻衣は安心して微笑んだ。
『ずっと一緒だよ』
完