想いの輝く場所(後編)-4
『奏子の、…未来の中にオレはいないの…?』
悠の昨日の言葉が胸に突き刺さる。
問の答え?
それだったら決まってる。
……未来なんて期待してない。
期待して裏切られたらと思うだけで足が竦むのに。
ただ、今精一杯、悠の事を好きでいたかった――。
ぐいっ――
急に腕を引かれて後ろを振り返る。
「…はあっ、なんで帰んの?」
目の前に肩で息をする悠がいる。
走って追いかけてくれたのだろうか…。
「だ、って…」
言葉が出てこない。
その代わりに涙が出て来る。
「仕事中、だったから…。私…んっ」
急に悠が私の両頬を手で包んで口付けた。
何度も何度も、角度を変えて。
こんな往来の激しい所で…、誰がみてるかわからないのに。
夕闇に紛れていることだけが唯一の救い。
私は、また悠とキス出来た事が嬉しくて。涙が溢れ出た。
「…っはぁ…」
やっとの思いで息を吸う。
唇が離れたと思ったら、体が軋む程抱きすくめられた。
「奏子…、ごめん…!」
悠の悲痛な言葉に、胸が苦しくなる。
「昨日、八つ当たりした、奏子が悪いんじゃないのに…。ごめん…」
悠の言葉にまた涙が出る。
小さく首を横に振るだけが精一杯だった。
「私こそ、ごめんなさい…」
悠の背中に腕を回して抱きしめた。
温かくて、包まれるような。
こんな満たされる気持ち、手放せるわけない…。
それは今までだって何度も感じたのに。
「19時であがりだから、待ってて」
急いでカフェに戻る悠に手を振る。19時まであと20分程。
近くの本屋に入って待つことにした。
活字を読むと治った頭痛が復活しそうだったから、写真の多い旅行の雑誌をパラパラ見ていると。
肩をトントンと叩かれる。
振り返ると悠が立っていた。
時間差で本屋を出て、そのまま近くの公園に入る。
冬の公園は人気がなく寒々しく感じた。
「はい」
悠が持っていた小さな紙袋から温かい飲み物を出してくれた。
カフェからテイクアウトしてくれたらしい。
湯気と紅茶の良い香りが鼻先をくすぐる。
「美和にはちゃんと話したよ」
「…え?」
真っ直ぐ前を向いたままの悠を見上げた。
「自動車学校で顔合わせたから…、昼ご飯一緒に食べた時にちゃんと言った」
「美和の気持ちは嬉しいけど、応えられないって。…流石に付き合ってるとは言えなかったけど、でも先生としてじゃなくて一人の女の人として好きだって…言った。そしたら、せーぜー頑張んなって。…まったく気の強えヤツ」
悠は苦笑気味に言った。
でもその瞳の中には優しさも見える。