想いを言葉にかえられなくても-2
「…はぁっ。…」
ようやく唇を離してくれた時には、肩で息をするのがやっとだった。
陸の唇が私のグロスでテラテラしている。瞳が離せない。
「…はぁはぁっ…。…陸、私達ってこんな間柄じゃないよね?…今まで仲良く友達だったじゃない?」
息を整えて、やっと出て来た言葉は…気持ちと正反対の言葉だった。建て前を気にして、いつも私は嘘を付く。
本当はもっと続けて欲しくて身体が疼いているのに。
「……。」
陸は何も言わず、空いている手の甲で唇をぬぐう。手を放してくれる様子は無い。
「陸、分かんないよ。どうして…」
「雛が欲しい」
あまりにもストレートな言葉で呆気にとられる。真剣なまなざしにヤられてしまう。
「欲しい」
返事をする間もなく、また唇がぶつかる。今度は舌が唇をこじ開け、私の口内を犯していく。逃げると追いかけ、捕まると攻められる。
キスを繰り返しながら片手は脇腹を往復していく。ワンピースを着ているので、手を服の中に差し込めずにいるのだ。
唇を離すと呼吸も置かずに手を掴んだまま、後ろ向きにひっくり返した。
床に敷いてある座布団に顔をうずめると、ワンピースのチャックを引っ張られる音がした…と思ったら、背中に生暖かな感触が伝わる。
「りっ…陸…!?」
「…っぱぁっ……、背中感じるの?…すんげースベスベ。舐めてるだけなのに、こっちまでやらしー気分になりそ。」
舐められた背中は、唾液でスースーする。チャックは背中の真ん中までなので、陸はもどかしくなり、掴んでいた私の両手首を放し、肩紐を下ろして腕から抜き取ると、下からワンピース引っ張り脱がせた。
しかし、焦っているのか上手く脱がせられず、腰の周りでシワを寄せている。
「ね、陸…。落ち着こう、大丈夫。逃げないから。ね?」
陸は困った顔をして私を見つめた。動きを止めたのを確認すると、私は上体を起こして、陸の正面に座り直した。
「…ごめん。いきなりすぎた。焦っちゃった……あははっ」
少し、しょげた感じの陸。
私は求められた事が嬉しかった。好きな人に愛撫をされて、感じない女なんていないでしょう?
たてまえなんか吹っ飛ばして、今すぐ抱き合いたい…その唇や手や指…身体全体で私を壊して欲しい。抱いて…あなたの逞しいモノで私を…
こんなに好きなんだから…
陸の彼女は…?
ずっとこの時を待ってた…
私はただの友達…?
理性が崩れる……欲望にブレーキが…き、か、な、い………
手を伸ばし、陸のだらりと放り出された手に重ねる。心臓が爆発しそうな程に脈打つのが解る。
顔を近付ける。
形の良い唇に…もう一度触れたい。頭の中は、いやらしい私が占領している。陸と…したい。…したい…した…い……。
自分の意識も薄れたまま、欲望だけで陸の唇にキスをした。近付いたら、くっついてしまった。まるで磁石のように。
「……、ひなちゃん…」
彼もまた、自分の欲望に抗っていた。かすれた声には、もう引き返す事は出来ないとの、意味を含んでいた。
唇を重ねたまま床に押し倒された。さっきとは違う優しい動作で。
先ほど中途半端に脱がされたワンピースを、片手でゆっくりと脱がしていく。下着は上下が対になっている薄い黄色。シルク地の物だ。触るとツルツルしている。
片手が胸元に滑り寄り、脇から中央に胸を寄せる。ぐにゃりと形が変わって、ブラのカップから乳首がはみ出してしまいそうになる。
「やわらかい…」
ブラジャーの中に掌を滑り込ませ、直に揉みあげる。時々、乳首を擦る動作が悩ましい。
隆起した乳首を確認すると、舌で舐めたり潰したり…自分の意識が全てそこに集中してしまっている。次から次へと繰り出される愛撫が、私を狂わしていく。
「んっ…あぁっ…」
自分の、あまりにも甘っとろい声に身震いする。一方、陸の手は私の背中を彷徨っている。背筋を上から下に、ブラのホックを摘んでは引っ張る。何か、戸惑いさえ感じられる。…遂に、陸は両手を背中に潜らせ、ホックを一生懸命外しにかかった。しかし、焦っているのか、引き千切られそう。終いには、うなだれた陸は申し訳なさそうに呟いた。
「あ、のさ…、すんげー雰囲気ぶち壊しなんだけど、これ…はずすより破りそう」と、グイッと引っ張ったブラのホックを恨めしそうに見ている。「あははっ、やだ…破かないでよ?」思わず笑ってしまう。
「外してくれません?」 陸の思わぬ告白に、緊張がいっぺんに取れてしまった。顔を赤らめながら、後ろ手でホックをはずす。肩紐がほろりと落ちて反射的に胸を隠してしまう。
「…見せて?手…どけて…」陸は私の手を掴み、左右に開かせた。頼りなく引っ掛かったブラジャーをスルスルと脱がしていく。
…ちゅぱ、ちゅ、ちゅぱ…先端の赤い実に吸い付いては舌で転がし、甘噛みする。一つ一つの愛撫により先端は快感に震え、過敏になり…口からは甘い息が漏れた。
「っぱ…っ…雛、いい?」
「ん…っふ…ぁぅ…」
陸は折り畳んだ膝の上に、私の太股の付根を乗せた。自然と広がってしまう脚。陸の目の前に、濡れて張り付いたショーツが丸見えになっている。自分からは見えないが、じっとソコを見詰める陸の視線で判る。絡み付く、その視線で。