おまえのすべてを奪いたい-1
二人の逢引きの場所である理科準備室のドアをそぉっと開けた美月は、正面の机で仕事をしている谷川に声をかけた。
「せんせっ!」
顔を上げた谷川は美月を手招きする。
美月は鍵をかけた事を確認し谷川に歩み寄る。
「せんせ、何やってるの?」
谷川が読んでいた資料を見るが、あまり理数系が得意でない美月にはちんぷんかんぷんだった。
「あー、今度研究発表があるんだよ」
椅子の上で大きく伸びをした谷川が美月に膝の上に乗るように促す。
恥ずかしいんだよ…それ…。
美月は少し顔を赤らめて、でも逆らわず谷川の膝の上に座った。
腰に手を回して美月を抱き寄せる。
「もうっ!せんせってば恥ずかしい!」
「せんせじゃないだろ。二人の時ぐらい名前で呼べ」
むっつり言う谷川に美月は子供っぽいなぁと思いながら軽く笑う。
「涼平」
名前を呼ぶと満足気な表情をして美月を引き寄せ唇を重ねる。
「んっ…ん」
鼻から抜けた美月の艶っぽい声に涼平は舌を使って唇を割る。
涼平にされるがまま軽く唇を開いた美月の歯列を舌でなぞり、上顎を舐めた。
「ん…あ…っ」
だんだん深くなるキスに美月は涼平のカッターシャツの胸元をキュッと握る。
「美月…。俺、ヤバいかも…」
唇を離し、そう呟く涼平に美月はトロンとした目で何が?と聞こうとしたら視界が反転した。
えっ?
バサバサと先程まで机に乗っていた研究発表の資料が床の上に落ちる。
机の上に押し倒された美月は腰から下は宙ぶらりんと、何とも不安定な体勢でいた。
「涼平?」
小さく名前を呼ぶ美月の唇を涼平は塞いだ。
繰り返されるキスに美月の呼吸が乱れてくる。
額にかかった前髪を掻き上げられ、そこにも唇を落とされる。
耳朶をキュッと摘まれ思わず声を上げてしまった。
「あぅ…んっ」
「美月は耳が弱いんだな」
嬉しそうな涼平に否定の言葉を口にしようとしたが涼平に耳朶を口に含まれ吐息に変わってしまった。