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あなたを知りたくて
【学園物 恋愛小説】

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あなたを知りたくて-9

「何で俺が眼鏡かけてると思う?」

美月の問いに答えず、谷川は聞いた。

「えっ?……みんなが授業に集中しないから…でしょ…?」

「まっ、それもあるけど」

ヌケヌケと言う谷川に美月は思わず笑った。

「俺の素顔は瀬尾にだけ見せたかったから」

「私…?」

意味がわからず首を傾げる。

「瀬尾は図書委員だろ?この部屋の前をよく通ってたし、授業してる時も自然と目がいっちまうし」

谷川は美月と目の高さを合わせるようにしゃがんで照れ臭そうに言った。

「ずっと好きだったよ。生徒に恋するなんて思ってもいなかったけどな。でなきゃドアの隙間から覗いてただけで誰かなんてわかんないよ」

美月の手を取り優しく包む。

「もう、眼鏡取って授業していいか?」

谷川の問い掛けに美月は思い切り横に首を振った。

「何でだよ?」

わかってるくせに意地悪だ…。

「今のせんせをみんなが見たら…私だけのせんせじゃなくなっちゃう…」

「よく出来ました」

その顔で笑うなんてズルいよ。

美月は頬を染めて俯いた。

「瀬尾?」

覗き込もうとした谷川の首に美月は抱きつき耳元で囁いた。

「眼鏡を外した時は私だけのせんせでいてくれる?」

谷川は美月の背中をギュッと強く抱き締めた。

「ああ。美月だけの先生だ」

美月の目の前に小指が出される。

美月は満面の笑みを浮かべて自分の小指を絡ませた。

「せんせ、約束だからね」

「誓いのキスでもしようか?」

真っ赤になった美月が首をブンブン振ると谷川は声を殺して笑った。

小指を解こうとしたら美月が谷川の手を握った。

「ん?どした?」

「……ぱ………る…」

「え?」

小さくて聞き取れなかった美月の言葉を聞き返す。

「やっぱ、するっ!」

必要以上の大きな声に何の事やら一瞬わからなかった谷川だったが、美月の意図に気が付いた。

「美月、好きだよ」

顔を上げた美月の方に身を乗り出して軽く唇を合わせた。

「私も…好き…」

真っ赤になりながらも微笑む美月を見て、ますます美月に惹かれている事に気付いた谷川だった。


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