やっぱすっきゃねん!VA-4
「おまえの打順だ…」
緊迫した雰囲気を破る達也の声。直也は、視線を切るとそばに置いたヘルメットとバットを掴んだ。
ヘルメットを被り、バッティング・グラブを着けているそばに乾が戻って来た。
「…真っ直ぐのスピードは並。球筋も普通だ。だが、メチャクチャ重い…」
乾のアドバイスは達也の分析通りだった。
2番バッターの足立もセカンドゴロに終わり、直也の打順を迎えた。
(…なんとしても打ってやる)
直也はアドバイスに従わずにバットを目一杯長く握っていた。ピッチャーが投げた。ボールは外の低め。
「この…!」
直也は、力を込めてバットを振り抜いた。自身では捉えたと思ったが、ボールの勢いに押されて打球はバックネットに当たった。
その様子をネクスト・サークルで見つめる達也。
(あのフォームなら変化球はおそらく…)
ピッチャーが3球目を投げた。真ん中高め。直也は“今度こそ”と力任せにバットを振った。
次の瞬間、視界からボールが消えた。直也は空振りの勢いからもんどり打って倒れる。キャッチャーは低めに落ちたボールをミットに収めていた。
「ストライク、スリー!」
(…あの投げ方だ。アイツの変化球はフォークとチェンジアップくらいだろう…)
達也はネクスト・サークルからベンチへ下がった。防具を着けているそばを直也が通り過ぎる。
「オイッ、おまえ1人で野球やってるつもりか?」
達也の言葉に、直也はまたしても声を荒げた。
「どういう意味だ!」
「オレや乾のアドバイスを無視したな。おまえが逆の立場だったらどうすんだ?」
捨て台詞を吐いて達也はグランドへ向かった。直也は、悔しげな顔でその後姿を睨みつける。
「直也!あんたはウチのエースなんだから。しっかりしな」
その時、バッド・タイミングで佳代が檄を飛ばした。
「うるせえ!」
突然の怒鳴り声に一瞬、面食らう佳代。
「…う、うるさいって何よ!こっちは心配して…」
その声を振り切るように、直也はマウンドに駆けて行った。素直になれない心。
2回表。達也は数回、胸元を突く真っ直ぐを要求したが、その度に直也のボールは甘くなり、ことごとくヒットを打たれた。
結局、直也は立ち直る感も無いまま、さらに2点を追加された。