ラブマッチ-1
もう、許さん。
「なぁ、悪かったって」
許さん、許さん。
「ほら謝ってんじゃん」
いくら温厚なアタシでもさすがにキレるわ。
「約束したのに後片付けしなかったのは本当に悪ぃ」
「そんだけ?」
「あ、いや、それと…お前の抹茶アイス食ってごめんなさい…」
よくも…。よくも、楽しみにしていたアタシの抹茶アイス食いやがったな。
同棲する際に約束したご飯の後片付けはあんたがするって約束もことごとく破られて、イライラしてるところにそんな巨大な原爆投下されたら、並みの爆発じゃ済まないんだかんね。
「アタシ、すげぇ傷ついてんの」
RPGだか何だか知んないけど、そんなもんにハマってやるべきこともしないで、何時間もテレビにかじりついて。
かなりイラついてんの。体力消耗してんの。ポーションくれよ。
「約束破ったのは俺が悪い。でもお前の場合、アイスの怒りがほぼなんだろ」
知ったような口きくんじゃねーわよ、ウンモ。コじゃなくモにしてやったアタシの配慮に感謝しなさいよ。
「たかがアイスでそこまで怒るのもどうかと思うけどな」
はぁ?何、逆ギレですか?
「前々から思ってたんだけどさ、お前食い意地張りすぎなんだよ」
完全に逆ギレですね。
「また買ってくりゃいいじゃん、アイスぐらい」
簡単に『また』で片付けんじゃねーわよ。食べたアイスはもう二度と戻ってこないんだかんね、逆ギレンジャー。
あんた自分言っといて覚えてないのかよ。
『結婚すんだから金貯めないとな。だからこういうのあんま買えなくなるけど頑張ろうな』って。
アタシ嬉しかったのに。
責任感0のあんたがそう言ってくれて本当に嬉しかったのに。
アタシが怒ってんのは、後片付けしなかったからでもアイス食べちゃったからでもなくて、アタシの期待を完璧に裏切ってくれちゃったからだよ。
あの言葉は何だったの。ただのノリ?深い意味なんて無いの?
地味だけど、あんたとなら楽しい人生になりそうだ、なんて考えてるアタシがバカみたいじゃん。
「ねぇ、あのさぁ」
もう頭きた。
「結婚のことなんだけど」
逆ギレンジャーになんて嫁げません。
「アタシ…」
「よっしゃー、0時!」
アタシの言葉は突如として遮られた。