今夜、七星で Tsubaki's Time <COUNT1>-5
「樹里で…想像しちゃった…」
「椿、おはよう」
「えっ?! あ、おは…よう」
「どうしたの? 変な顔して」
今日は、月曜の朝。
樹里はあたしの隣のデスクなので、もちろんあたしの隣に座る。
まともに顔が見れなかった。
心臓がうるさく高鳴って、樹里のセックスを妄想したことを申し訳ないと思っている自分がいる。
「いっ、いや…この間は、楽しかった?」
…馬鹿馬鹿っ! 自分で墓穴掘ってるよっ!!
「ああ、ユースケ?」
くすっ…と笑う樹里。別にただ笑っただけなのに。
――土曜の朝に、想像した樹里とかぶる。
「楽しんだわよ。もちろん。でも、まあ…」
ぽんっとあたしの頭を叩いて、
「恥ずかしいから、あんまり想像しちゃやだよ?」
と厚く、ぷるんとグロスが輝く唇に人差し指を当てながらウィンクしてそう言った。
「ば、馬鹿馬鹿っ!! そんなことっ…!!」
「もー、冗談なのに。まさか図星? 椿ってむっつりスケベ?」
樹里が楽しそうに、ケラケラ笑いながらあたしの肩をぽんぽん叩いてる。
やーん…。また、墓穴掘っちゃった…。
そんなこんなで、毎週金曜はとりあえず樹里につき合うことになった。
もちろんその後には先輩とも会うのだけど。この毎週金曜に樹里につき合うことで、先輩との時間が苦痛な時間なんだと改めて認識してしまった。
…「来ないで」と思いながら、家で先輩を待つよりはいいことなのかもしれない。
そして…時は11月…
「ちょっとやらなきゃいけないことがあるから先行っといてくれる?!」
樹里は会社で少しばかり、やらなくてはいけない仕事があるらしい。
あたしは一足先に、七星に向かった。
「あっれー? 今日椿さんだけですか?」
キタよ…この色魔…。
声をかけてきたのは、もちろんユースケ君だった。
ユースケ君でHな妄想をしてしまったことを、ほんっとに忘れたいくらいの遊び人。
仮にも樹里とそういう関係なんだから…樹里がいるとこで他の女に耳元で囁きかけないであげてって思う。
よく、こんな男と寝れるよ、うん。
「今日は樹里、ちょっと遅れるんです」
あたしよりユースケ君は年下だけど、あたしは相変わらず敬語を使ってる。
こんな男に、馴れ馴れしくできないっていう気持ちの表れ。