私の存在証明@-1
神様っているのかな?
著名な哲学者達は存在を証明しようと試みた。
じゃあ私は?
私は本当に此処にいるのかな?
地球で、日本で、この地域で。私は本当に存在してるのかな。
誰かが見てる夢の登場人物かもしれない、実在しない創作物かもしれない。
だって私が本当に此処にいるなんて、誰も証明してくれない。
ねぇ私は本当に此処にいますか?
―――――
季節は春。
沢山の人達の様々な新生活が始まる中、私は高校生活で二度目の春を迎え、変わらない日々を過ごしていた。
今日は生憎の空模様。
鉛色の空、今にも大粒の雨を降らしてしまいそうな厚い雲。
街ゆく人々はそんな空を見て顔を顰めるけど、私はこの空は嫌いじゃない。だって皆雨を避けて足早に帰路を辿り、いつもより早く帰宅するから。
「ただいま」
私もその中の一人。
帰宅を待つ人はいないのに、ただいまを言うのは癖みたいなものだった。
「あー……降ってきちゃった」
制服から着替えている途中で、小さな雨粒が地面を濡らし始めた。
勢いの増す雨足に焦りながら、外の洗濯物を取り込む。
しとしと、しとしと
取り込んだ洗濯物に囲まれながら、ゆっくりと雨音だけを聞いていた。雨音は嫌いじゃない。癒しの音楽よりも私を夢見心地にしてくれるから。
――ガチャ
玄関の扉が開く音で私は微睡みから覚醒した。
「散らかってるからごめんね」
「充分綺麗だよ。そもそも我が家は悲惨だよ。男二人暮らしは壮絶さ」
お母さんの声と、知らない男の人の声がする。
――きっとお客さんだ、早く隠れなくちゃ。
私は慌てて部屋から飛び出した。
いつもお客さんは客間に通される。客間から私がいる部屋は死角だから、時間の余裕はある。
足音を殺しながらゆっくりと階段を昇る筈だった――のに
「少し濡れたからタオル借りるよ」
「えぇ廊下を突き当たって左にあるわ」
お母さんの声に誘導されながら、先程の会話の主が私の視界に現れた。
「えっ?」
見られたっ!
そう思った時にはもう遅くて。唖然とした男の人の横をすり抜け、私は階段を駆け上がった。