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愚かに捧げる
【痴漢/痴女 官能小説】

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愚かに捧げる6-1

厚木は悔いていた。
一時の感情に負けて一人の女の子を深く傷つけたことを。
あれから何度も真理子に会いに家の前まで行ったが、結局勇気が出ずに帰ってきてしま
っていた。加害者の自分がどんな顔をして真理子に会えばいいのか分からない…なんて
自分に言い訳をしていたが、結局勇気がないのだった。
今、学校の行き帰りは母が付き添っているらしい。
一度だけ彼女と母らしき女性が家から出てくるのを見たが、この短期間で真理子は驚く
ほど痩せていた。顔も青白く無表情で、生気というものが感じられない。
(これが俺たちの…俺のしたことだ)
訴えられなかったんだからよかったじゃん、と伊藤は言う。
もう興味を失った、と奥田は言う。
そして敏樹は。
厚木に例のビデオをダビングしたCD-ROMを押し付けると「分かってるよな?」とだけ囁
いた。
分かってるよな?俺たちは共犯だ。裏切って警察にでも行ったらこのムービーをばらま
くぐらい簡単なんだよ…?
(分かってるよ。でも罪を犯したら償うべきなんじゃないのか?誰にもばれなきゃそれ
でいいのか?)
真理子に振られた腹いせに、敏樹の提案に乗った罪。
止めるべきだった。事前にでも、最中でも。いくらでもチャンスはあったのに。
赤くなって嫌がる顔に、涙の味がする唇に興奮した罪。
…不幸中の幸いだったのは、敏樹がこのマスターテープを基に真理子を脅すつもりがな
いようだということだ。
おそらく敏樹からコンタクトがない限りは二人の関係は終わったと見ていいだろう。
だからと言って今更自分が真理子と付き合えるとは思えないが…。


厚木の中に答えが出ないまま、今までの人生の中で一番何もない8月が終わった。
9月。高校生にとっては残暑の厳しい中、また登校しなければならない日。
大学生の厚木にとってはまだ夏休みだ。
厚木は一つの決心を持って駅に佇んでいた。
(これで、最後にしよう)
償いをすると言ってもどうしたらいいのか分からない。
菓子折りを持って中田家の玄関で土下座すればいいのか。
ムービーをばらまかれるのを恐れず警察に行けばいいのか。
…どちらにしても更に真理子を傷つけるだけのような気がした。
真理子のことを考えると、自分が彼女の前に姿を現さないのが最良と思えた。
だから最後に彼女の姿を一目見たら…自分の思いを断ち切るのだ。
そしてこんなストーカーみたいな真似も終わりにする。

ほどなく、真理子が姿を現した。
隣に母親の姿はない。7月に見た時よりは多少血色は良くなっているようだ。
真理子は以前敏樹と待ち合わせした場所に目をやり、背けた。
厚木は慌てて真理子に背を向け、案内板を見ているふりをする。
真理子は厚木には気づかず、改札を通って行ったようだ。
厚木はこっそり息をつくと彼女の後を追った。

相変わらずの混雑。厚木は真理子と同じドアから乗れたものの、随分離れた位置に押し
込まれてしまった。
(まあ、ちょうどいいか)
厚木は連結部分の近く、真理子はドアとドアの間のスペース。
座っている人の上の空間は空くので真理子の姿はなんとか見える。
彼女は厚木と逆の方向を向いているのでこちらに気づかれることもなさそうだ。
これで彼女の姿も見納めだとつり革を握り締めた時、電車がガタン!と揺れた。


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