光の風 〈回想篇〉中編-2
「オレを捕えようとした黒い光と、ロワーヌを守ろうとした白い光。昔あったんだよ。」
「どういう事だ?」
カルサが体を一歩近付けて問いかけた。貴未の表情が不安そうに歪む。
「永の力はオーラの様に目に見える事があって、自分の意志とは反した時は黒い光をまとうんだよ。」
しかしそれは強く永の心が動いた時じゃないと反応はしない。永が心の底から強く思わないと表れないと貴未は続けた。特に小さかった頃によくあった現象で、マチェリラと再会した頃には全くといっていい程、それが出る事はなかった。
「だからオレを捕えようとした光が永で、それを嫌がっているのも分かったんだ。でも白い光は違う。」
次第に声に力が入っていく。貴未が何を考え不安を抱えているのか、それが周りには何となく伝わっていった。
「白い光は強く、永が強く強く願った時に現れる光。その力がロワーヌを守ったなんて…オレには分からない!」
最後の方は囁くような叫びだった。強く強く願い永はロワーヌを守ろうとした。貴未にはそれが理解できなかった。自分達を引き裂き、もしかしたら殺そうとさえしたかもしれない相手を守る。
貴未は自分の位置が分からなくなっていた。
頭を抱えて俯いてしまう。貴未の苦しみがカルサには痛い程分かっていた。
「ロワーヌは、言うなれば被害者だ。別にあいつが事を起こし、世界を巻き込んで何かをしている訳ではない。永の真意は永にしか分からない。」
まるでそれは貴未にではなく、自分へ言い聞かせているように感じた。貴未はゆっくりと頭を上げた。カルサの視線と貴未の視線がぶつかる。
「会いに行くしかない。」
二人とも目で語り合っていた。少しずつ目に力が戻っていく。貴未の迷いや不安は前へ進める事で断ち切った。必ず永を取り戻す、その思いは変わらない。
「そうだな。」
貴未に笑みが戻った。応えるようにカルサも微笑む。傍でマチェリラが笑った事に気付いた貴未は、マチェリラに向けても微笑んだ。
「悪い、話を止めて。それで、リュナはどうしたって?」
カルサは頷き、話を戻した。
「リュナは自分の事を何も知らない。だからレプリカに話を聞くことにした。」
そこに辿り着く前の交戦でリュナをかばってレプリカは深手を負ってしまった。手当てをしてもらうように民の部屋に行くようにレプリカに指示をしたとリュナは言う。二人でそこに向かうつもりだったが、民の部屋付近は既に戦場と化していた。
自分自身の存在に不安と疑問がよぎる。もしかしたら自分が原因で争いが起こり、襲撃をかけてきたものは自分の仲間なのかもしれない。リュナの頭の中はパンクしそうなほど、いろんな事が巡っていた。明らかに動揺している。
カルサは直ぐにリュナが追ってくることを信じて突き放し、一人で民の部屋に向かった。