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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈回想篇〉中編-11

「それが、エプレットが急に…。」

「エプレット?どこだ?」

兵士の言葉を遮りカルサは問いかけた。兵士は辺りを見回し、目的の人物を探す。うっすらと残る記憶を頼りに、覚えのある方向を注意深く眺めた。

「あ、あちらです!入り口付近に座っています。」

短く礼を言うとカルサは兵士の指し示した方向を目がけて歩き始めた。自然と早くなる速度が彼の気持ちを表している。

近付くにつれて、エプレットの顔色の悪さに気付かされた。壁に背中を預けて具合が悪そうにしている。カルサは彼のすぐ傍に片膝を付けてしゃがんだ。

「陛下!?」

エプレットの様子を診る為に傍にいた兵士が声をあげた。思わぬ人物に驚きを隠せなかったらしい。その声に今まで目を閉じていたエプレットも、うっすらと目を開けた。

「エプレット。」

少し前屈みになって名を呼ぶ。エプレットの視界に大きくカルサが入っていた。

「陛下。」

目を大きく開き、体を起こそうとするのをカルサは手を差し出して止めた。小さく首を横に振る、その姿をみてエプレットは再び背中を壁に預けた。

「エプレット、光玉を使ったな?」

確信があった。カルサの言葉に擦れた弱々しい声で肯定を告げる。

「ここに同僚がいるんです。彼がもう息を引き取りそうになって、何とか引き止めようと無我夢中に叫んでたら。」

「光玉が発動したのか。」

エプレットは頷いた。あまりの顔色の悪さに見兼ねたカルサは彼の手を取り回復魔法をかけ始めた。

それに気付いた千羅はカルサの横で屈み、カルサの手からエプレットを離し自分の手の上に乗せた。そしてカルサに代わり、千羅がエプレットに回復魔法をかけ始めた。

「回復魔法は私の方が適任です。」

「悪い。」

千羅が首を横に振ったのを確認すると、カルサは再びエプレットの様子を伺った。カルサのあまりにも心配そうな顔に申し訳ないよりも、嬉しさの方が大きく感じられた。その為か自然と笑みがこぼれる。

「すみません、ありがとうございます。」

二人に向けた言葉。オーバーワークで疲れ果てているだけだ、体力が戻れば大丈夫だろう。彼自身も、カルサ達もそれが分かった。

「お前のおかげで沢山の命が救われた。オレの光玉を本当に使えるとは恐れ入ったよ。」

カルサの優しい声がエプレットの中に染み込んでいく。

「滅相もない。」

何よりカルサの言葉がエプレットの体を癒していくような、そんな気がした。彼の言葉1つ貰えるだけで、こんなにも心が軽い。

自然とそこには笑顔が生まれていた。


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