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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈回想篇〉中編-10

「陛下。」

「ナタル!よく目を覚ました!ナタル!」

ナタルが差し出した右手をしっかりと両手で握り、彼との距離を縮める。今にも泣きだしそうな自分にカルサは気付いていない。

「陛下、お逃げ下さい…。貴方は狙われている。」

更に顔を近付ける事でカルサは疑問符を投げた。

「あの時、私はあの侵入者に言いました。ここはシードゥルサ国王家、カルサ・トルナス様の城。即刻に立ち去れ、と。」

擦れた声で懸命にナタルは言葉を綴る。カルサは頷くことで相づちを打った。

「しかし侵入者は、こう返してきました。」




−それは我が子の名だ。

−ここは光を操る戦士、ウレイの城だろう。





カルサの思考が止まった。

 大きく開かれた金色の瞳は小刻みに震えている。

「陛下、貴方は人違いをされている。お逃げ下さい。」

動揺しているのか、カルサは手に力が入らなくなっていた。ナタルの声に反応し頷いてはいるが、目が泳いでしまう。

「あの侵入者は、ウレイが持つ物全てを奪うと言ってました。きっと容赦なく陛下を狙います。」

ナタルはカルサの手を強く握り、少し自分の方に引き寄せた。

「この騒動は貴方様のせいではありません。決してご自分の存在を責めてはいけない。」

 ナタルの強い眼差しが一心にカルサに向けられる。

「違う。絶対に貴方のせいではありません。」

擦れた声なのに彼の言葉には力があった。強い想いはカルサを掴んで離さない。カルサは強く手を握り、ナタルに声をかけた。

「分かった。ありがとう。よくやってくれた、ナタル。」

ナタルは微笑み、ようやく体をベッドに預けた。カルサの微笑みがナタルの気持ちを楽にさせる。

「また後で見舞いにくる。今はゆっくり休んでくれ。」

肯定の言葉を呟くとナタルは静かに目を閉じた。握っていた彼の手をゆっくりとベッドの上に置き、カルサは体を起こす。

周りにはナタルの部下が並んでいた。

「後は頼む。」

兵士達が敬礼したのを確認するとカルサはその場から離れた。今にも崩れ落ちそうな気持ちを必死に支えているのが千羅には痛い程よく分かる。

 それでもカルサはまだやらなければならない事がある為、ここからは動けなかった。真相を知るべく近くにいた兵士に声をかける。

「おい、この光はなんだ?」

部屋を取り巻く光の煙は自分の力の気配がする。


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