二個目の苺〜カフェオレ〜-1
「おい、まだ決まんねぇのかよ」
「もーちょっとだけだから」
「ったくよう…」
俺はため息をついて、目の前の小さな彼女を見る
唯が、駅前に新しくできたケーキ屋に行きたいと言うから、めんどくせーと思いながらも来てみたが…
40分並んでやっと入れたと思ったら、メニューを見ながら延々迷ってやがる
女はみんなそうなのか?
それともこいつだけか?
まさか、こういう奴のせいで40分も待たされたんじゃねぇだろうな
「なんか言った、竜?」
「なんも言ってねぇよ」
心で文句を言う俺にかまわず、唯は幸せそうに悩んでいる
まぁこんなに喜ぶなら…たまにはいいか
嬉しそうな唯の顔を見て、幸せだ、なんて柄にもなく思う
やっと決まって注文し、また長々待たされて、随分大きなケーキが2つ運ばれてきた
「いちいち遅ぇなぁ」
「しょうがないよ、混んでるんだから
…それより、竜も食べるんだね?」
唯が意味ありげにこちらを見る
「悪ぃかよ。一応同業者だからな。潜入調査だよ」
「嘘つきー甘いもの好きなくせに」
言い当てられて、少し赤くなってしまう
「うるせーよ」
まったく。
こいつ、いつも鈍いくせに時々変に鋭いんだよな
ぐさっとフォークを刺して、少量を口にほうり込む
ふんわりと甘い味が口内に広がった…
***
「んー!おいひー!」
つい大きな声を出してしまい、隣のテーブルのカップルに笑われてしまった
「んっとに、恥ずかしい奴だな」
竜が私のおでこを軽くはじく
「いたっ!だぁって思ってたよりもずーっと美味しかったんだもん」
「まぁ、悪くはねぇ。愁のやつには負けるけどな」
「えーえすのケーキって愁さんが作ってるの?」
「あぁ。涼しい顔でつくりやがって…いつもすげーうまいんだよな」
「ふーん…?」
よだれが垂れそうな顔でうっとりする竜をつい訝しげに見てしまう