電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―文化祭編―-1
――それは、日常の中に産まれた、非日常。
「やっぱり中学と比べると華やかさが違うねー」
感心というより単なる感想めいた、どこかふわふわした口調には、特別な感情はなさそうだった。
「公立の中でも、うちはこういうお祭りごとに力いれるからね。体育祭の時もそうだったじゃない」
「…うぅ、海馬が回らないよー◎ 美由貴はね、あのねマイノリティでしょ?」
「あー…コメントしづらい、っていうこのコメントでコメントになってるね」
「ひゅーっ! 挑戦的ー!」
何故か美由貴のテンションが上がってしまった。八年の付き合いになるけど、この人のテンションや会話が未だ真琴にはよくわからない。多分最期まで分かることはない気がする。
そしてちょっと目を離すと、美由貴が女子生徒にガンを飛ばしていた。
「あわあわあわあわ…」
元々の眼が大きいので、まばたきをせずに睨まれると、真琴でも怖い。近くで見ている小学生も怖がっていた。怯えて動けない女子生徒に心から同情し、美由貴を引き離す。
「はい、いきなり眼を見開かない、知らない人にガンとばさない、知らない子供を怖がらせない、そして意味なく涎垂れそうなほど口を目一杯開かない」
「あがあがあがあが」
「あー意味あるのね、はい、顎関節症ごっこは後でしようね、ほら、美由貴の好きな綿飴あるよ」
「バカにしないで! それぐらいわかるんだから!」
心中溜め息を吐く。このバカを相手にすると憑かれる。間違った、疲れる。
美由貴が綿飴作りに見惚れてる間に、今の状況をもう一度確認しようと思った。現実逃避は悪いことじゃない、と思う。