電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―文化祭編―-9
「倉本せんぱ」
「――車が三つで轟けー!!」
「いっ!?」
美由貴の突然の叫びは真琴にとってもいきなりだったが、倉本先輩にとっては室内にいながら落雷に打たれたように感じたと思う。
美由貴のふざけた叫びは、しかし確かな〔意志〕を持って、倉本先輩を昏倒させた。
「ふっふー♪ 親の仇ぃ!!」
「おぃ」
なに考えてんだバカ脳みそシェイク一般人の前で〔現象〕起こすなフォローが大変になると、余程言ってやろうかと思ったが、もうこれはそんな問題じゃない気がした。
「……ありがと美由貴、ありがとね、うん、間違ってはないよただ解決に結びつかないだけであはは」
無表情に棒読みにおざなりに美由貴を褒めてもうツッコミを諦め、次に進めることにした。
「すみません、仲町先輩、アキ。事情をわかってる範囲で教えてくれますか?」
チラッと倉本先輩を見る。外傷はなく、綺麗に意識だけを絶っていた。起こせる〔現象〕の大きさと精密さと多様さは、誇張抜きに真琴が千人かかっても美由貴は上をいく。
けど、真琴はそれをどうとも思わない。生きていく上でそんな〔現象〕は――要らない。
「アタシたちはこういうことに結構慣れてるから、なんとか解決したいなって思ってます」
――意識して話を振らないようにしていた。だが、やはり、友人の困惑の眼は、そんなやり方では誤魔化せなかった。
「あの、真琴。倉本先輩は……お姉さんが?」
「……うん、まあ。今のはそう」
「その、……超能力?」
「うん、多分アキから見たらそうだと思う」
それどころか。人類みんな、きっとそう思うだろう。
「あの、さ、じゃあえっと、真琴も……その、超能力とか霊能力とか、そういうの持ってるの…?」
……アキの戸惑った顔が胸に痛い。だからちょっとだけ、嘘をついた。
「美由貴は持ってるけど、アタシはからっきし。……んまあバカとハサミは使いようってこと。だからごめん、何があったか、教えてくれない?」
「……私が話します」
今まで黙っていた仲町先輩が、はっきりと割って入る。
何故か、怒っているような気がした。