電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―文化祭編―-3
「綿飴ってあれだよね、なんかさ! 口の中に入れると溶けてカチカチになるじゃないか!!」
「……あー、なるね」
「そいでさ、それでもう口に入れたら綿飴じゃないじゃないか!! ただの飴じゃないかぁ!! バカたれぃ」
「あんたが綿飴みたいに溶けてくれたらアタシはスゴく嬉しいんだけどね、代わりに脳みそだけが溶けちゃったね」
いつものように適当に返すが、天使は文化祭の空気にあてられたのか、テンションがかなり高い。
「ねーねー真琴・K・エルサレムー、あれ何ねぇ何あれ!?」
真琴の後ろに訳の分からない言葉がくっついたけど、真琴はいちいちつっこまない。話が進まないのだ、そんなことをすると。
「…あー、映画。演劇部がなんか機材借りてやってた。うちのとこでもロケでやってたでしょ」
映写室の前には手作りの看板があった。タイトルは『鏡を挟んだワタシとアナタ』。(9:20〜 9:50〜)と見る限り、大体三十分ぐらいみたいだ。
「どんな話、美由貴ねー、死体がグチャグチャで内臓がデロンデロンなやつがいい!」
「何そのスプラッター好き? 高校の文化祭でそんなの映せるわけないでしょうが。なんか、学園ファンタジーって聞いたけど」
「……なんだぁつまんない。美由貴ねー、一回見てみたいな、ギガゾンビもの! それか猫殺しやりたーい!!」
「頼むから現実に起こさないでね、あんたやりかねないから」
美由貴のホラーやグロいもの好きさには本当に嫌になる。こんなのが天使っていう事実がさらに真琴のストレスを溜めさせた。
それに、どうにもこの映写室からは奇妙な気配があって、正直あまり入りたくはない。
「どうすんの? 見る?」
「見たぁい! 映画好きー二番目に大好きー!」
しかしなんだかんだで見ることになった。まぁ真琴も映画には興味あるし、美由貴の映画好きは本当で、映画見る時は大人しくなるから、文句はない。
……筈だったのだが。
やはり奇妙な気配は、予感は当たっていた。文化祭くらい、普通に楽しみたいのだけれど。
小林真琴。
神社に産まれ、本物の霊能力を持った、本物の巫女である。