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じゃんけん大会
【サイコ その他小説】

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じゃんけん大会-1

こんな日に限って雨とはな。不安はもちろんあったが、実際に降られたんで少々とまどう。と言うよりか、結構ショックだ。
一人ため息をつきながら信幸は思った。しかし、いつまでもこんな事してたんじゃ始まらない。また一つため息をついてから、制服に手をかけた。
喜んで入った高校も、今になればかったるい。授業があると考えると急に落ち込んでしまう。早く卒業して何か職についてしまいたい。そっちの方がきっと楽だ。
そんなことばかり考えながらカッターシャツ、ブレザー、と順番に服を着る。ネクタイが微妙にずれたのを気にしながら、ボタンを下から順にとめていく。
『かあさーん、飯できた?』
と、先ほどとは違う明るい雰囲気で問いかけた。
『とっくにできてるわよ。』
母親はうんざりしたように言った。
その言葉に少しイラッとしながらも、
『サンキュー。』
とだけ言っといた。
大して心のこもっていない料理をたいらげたあと、洗面所で歯を磨き、頭をセットしてバッグを手に取り、玄関の靴に足を引っかけた。
『行って来ます。』
と、聞こえるか聞こえないくらいの小さな声で呟くように言った。鍵とチェーンを同時にはずし、重たいドアノブをまわし、外に飛び出した。
駐輪場に足を運び、自転車にまたぐ。時間を確認してから、余裕を持って家をあとにした。

学校に着いたのは早めの時間帯だった。こんな暇な日に限って早く着いてしまった。そんな早めの教室にはどんよりとした空気が流れていた。
『おお、ノブか。』
友達の坂本慶太が寝ていた顔を起きあがらせながら言った。慶太は眠たそうなのと元気がなさそうなのが混ざって最悪な顔になっていた。
『残念だよな、こんな日に限ってよー。』
『全くだ。』
二人は同じタイミングでため息をついた。それを見ていた英子はクスッと笑った。
『何笑ってんだよ。』
『だって同じタイミングでため息出てたから。』
にやけ顔のまま英子は言った。その後、俺と慶太は顔を見合わせてから少しだけ笑った。
その間、ちょっとだけ元気が戻った気がした。
そんなことをしている内に、ぞろぞろと他の生徒達が教室に入ってきた。
カバンを机に投げるようにして置いて、どさっとあからさまにキレていることをアピールするように座った。
先生が入ってきたときには全員席に着いており、先生はどんよりした空気が何の理由が原因か分かり切っていた。
『そんなに落ち込むなよ。楽しい授業が受けられるじゃないか。』
その言葉は一瞬にして全員を敵に回した。
『ウソだよ、ホントはな、今日は別のイベントがあるんだ。』
この言葉にみんなが一斉に目を輝かせた、かに思えた。が。
『じゃんけん大会だ!!!!』
先生の言っていることはよく分かる。しかし、何故にだ。みんなが唖然としているのを見た先生は、驚いていた。
『どうしたんだよ、オマエら、喜べよ!!』
我に返った生徒達の中に、喜ぶものなんて一人もいなかった。しかし。
『よく聞けよ。このじゃんけんで勝ったものには、、、、、、、、、、なんと、、、、、、、、、、、、、、、、、、、賞金五十万円がありまーす!!!!!!!!!』
よだれを垂らしながら喜ぶ奴もいれば、でもどうせ勝てやしないと諦めかけている奴もいた。しかし、そんな連中も五十万円は夢のような金額なので、嬉しいことには変わりない。心のどこかでは喜んでいたはずだ。
もちろん俺もその中の一人だったわけなのだが。
『おいっ、ノブっ!!!!!!』
叫びながら飛んできたのは別に大して仲良くはない寛太だった。


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