未完成恋愛シンドローム - 白昼夢 --10
「・・」
校門前。
「・・・」
PM 5:15
結局５時を少し過ぎた辺りで待ち合わせの場所に着いた。
が。なぜかコタローの姿はなく、なんだかんだと待っている内に10分以上過ぎていた。
「なんやねん・・」
一瞬、怒って帰ったのかと思ったけど、普段あいつ自身がオレのことをよく待たせている以上、さすがにないと思うし。
「・・・・・」
ふと後ろを向く。校舎が見える。
そういえば、カイトはもう帰ったんだろうか？
カイトが入ってる水泳部は、大体９月の初めくらいまでは学校のプールで練習をして、それ以外の季節は基本筋トレ・週２回ほど市民会館にある室内プールを借りて練習するらしい。
・・まぁ、室内プールが嫌だとかいってよくサボってるらしいけど。
嫌なら寒中水泳でも行ってこい。
「・・あ」
自分の思考に苦笑しながら視線を動かしていくと、コタローの姿が見えた。
―つか、まだ居たんだこいつ。
遠かった影が、見る間に近付いてくる。
「お待た。・・なに怖い顔してはんの？」
しゃあしゃあといってのける。
「今何時？」
「えー・・」
ちなみに正解はPM 5:20。
「約午後５時」
「・・約５時半の方が近いよな？」
そういう問題じゃあないと思いつつも、皮肉を返す。
「んー、まあ確かに」
「・・・・」
なにをいっても無駄なので、取り敢えず大きな息をつき、気を取り直す。
「つか、今の今までなにしてたん？」
「ん？」
「更衣室にあんたの服なかったから、てっきり先行ってるかと思っててんけど」
―んで、もしかしたら帰ったかも、と。
「あー、気付いたんや。何時頃に来たん？」
「え？」
少し考えてから、
「・・・・５時過ぎ」
嘘をついても仕方ないので、正直に答える。
「なんや、イヴも時間過ぎたんやん」
「あんたと一緒にすんな！」
思わず声を荒げる。
―こいつは・・・・・
「人の揚げ足取る前に、20分過ぎてから来たって事実を反省せえや」
「いや、５時前にちゃんと来たで」
・・・・？
「は？」
―なに言うてんねん、こいつ。
「50分くらいに着いてんけど、トイレ行ってた」
「どんだけ長い間・・いやごめんなんでも」
「ああ。（大）な」
「聞いてへんわ！」
言って、尻を蹴っ飛ばす。
「痛いなー、ポンポンポンポン・・。痣になったらどーすんの？」
蹴られた尻をさすりながら、不満顔で言うコタロー。
「・・えーやん別に。あんたのケツが青なってても、そんなもんだれも見ぃひんし」
「いややそんなん。蒙古斑みたいやん」
「蒙古斑て・・つかだからだれもそんなもん見ぃひんて」
「見たいクセに」
「誰がやっ！！」
・・・・・。
「着くまでに何回蹴られんねん、俺」
「あんたがアホみたいなことばっか言うからや」
なんだかんだで到着しました。
入り口までの階段を、コタローの後ろに付いて上っていく。
「あれ？」
「？」
ドアノブに手を掛けたコタローが、一瞬止まる。
「鍵かかってるし」
「・・まぁ、戸締まりくらいはするわな」
―・・実はこの家、こいつの家じゃないんじゃね？
「面倒くさいなー」
「・・・・」
ブツブツ文句を言いながらカバンから鍵を取り出し、開けるコタロー。