プリズム2-1
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エリカと琢也はともにKO大学へ進学していた。エリカの人気は相変わらずで、男女
を問わずエリカはいつも人垣に囲まれていた。エリカに好意を抱く学生も多かったが、
あまりの人気に「在学中は彼を作らない。」とエリカが公言したため、エリカのファン
が集まりファンクラブが発足していた。
それでもエリカは取り巻きを離れて週に一度は琢也に会いに来ていた。琢也と二人き
りになると、エリカは日頃のストレスを解消するように激しい性欲をぶつけて琢也に
甘えた。琢也はそんなエリカが可愛く、エリカの性欲を受け止めることに喜びを感じ
ていたが、エリカのある変化にとまどっていた。エリカは大学生の間は自由に恋愛を
楽しもうと、琢也に他の女性と付き合うように勧めて来るのだ。
「琢也。舞ちゃんのことどう思う?」
「本気みたいよ。」
「本気って?」
「琢也のこと本気で好きなのよ!」
「・・・・・」
「昨日の飲み会でもあんなにアプローチしているのに、琢也がつれないから舞ちゃん
今日学校休んでいるのよ。琢也のせいよ。」
「そんなこと言っても・・・・」
「舞ちゃんのこと、どう思っているの? 昨日、舞ちゃんと何があったの?
送って行ったのでしょ?」
昨夜の飲み会で酔いつぶれた舞を琢也が送って行ったのだ。
「舞、酔ってて、帰りの車の中でキスされた。僕のことが好きだって。
舞の部屋に誘われたんだけど・・・・」
エリカが目を丸くする。
「どうしたの?」
「酔ってるから、もうおやすみって・・・ 帰ってきた。」
「ばか!」
「・・・・・・」
エリカが呆れ顔で首を振る。
「すぐに電話して。舞ちゃんのところへ行くのよ。」
「そんな!僕はエリカと・・・」
「エリカのお願いよ。舞ちゃんに優しくしてあげて。」
「そ、それはダメだよ。舞ちゃんを傷つけるようなことはできないよ。」
エリカが琢也の耳元で言った。
「舞は処女よ。女にしてあげて。」
「!!!!!!」
エリカにはいつも驚かされるが、今度ばかりは本当に驚いた。エリカの琢也に対する
考えも理解できないし、第一、舞は遊べるような女性ではなかった。
舞は幼稚舎から一貫教育を行う有名女子高を卒業しKOに入った。お嬢さま育ちであ
りながら誰にでも優しくきめ細かな気遣いを忘れない。控えめな性格と落ち着いた
顔立ちで、エリカにはないしとやかな美しさを持っていた。
そんな舞を琢也は心のどこかで意識しているのを感じていた。そして昨日、お互い酔
っていたとはいえ、舞のキスにエリカのことを忘れて応じてしまった。
そしてそのキスは、エリカに話した「キスされた。」というようなものではなかった。
車を止め、抱き合い、30分以上もねっとりと舌を絡ませあったのだ。そんな舞に今
会ってしまえばもう止まれなくなってしまう。
「エリカ。舞ちゃんは本気じゃないと付き合えないよ。分かるよね?」
「もちろんよ。エリカと同じように、舞にも本気じゃないと許さないわよ!」
琢也は頭が真っ白になった。エリカは琢也の理解を遙かに超えている。
言葉を失っているうちに、舞に会いに行くことを約束させられてしまった。
舞の部屋の近くで琢也は悩んでいた。
このまま舞に会い、舞をこれ以上傷つけるわけにはいかない。
舞の好意に応えて、エリカを失うことは考えられない。
悩んでも答えが見つからないのは分かっていた。
既に答えは決まっていた。
琢也はエリカのためなら悪魔にでもなれると誓っていた。
エリカと地獄に落ちるのだ。