キライ B-1
あの後、部活を休んで私を送ると言った大迫と部活を休んでほしくない私とで多少の押し問答をして結局私が大迫の部活終了を待つ事に落ち着いた。
私を探すために部活を抜け出させてしまった上に休ませる事だけはどうしても嫌だったから。
途中から部活に参加した大迫より少し遅れて体育館に入る。
バスケをやってる大迫をこんなにまともに見たのは初めてだった。
今まではバスケ部全体を何となく見ていて、誰か一人を追いかけて見るなんてしていなかったから。
長身を活かした豪快なシュートが決まる。
つい笑顔になった私と大迫の目が合った。
大迫の唇が声を出さずにゆっくりと動いた。
『見たか?』
そう言ったように見えた。
私は頷いてピースを送った。
「お待たせ」
校門にもたれていた私に大迫の声が聞こえた。
軽く首を横に振り並んで歩きだした。
特に会話する事もなく黙々と歩く。
「香奈…」
首を傾げ大迫を見た。
そういえば大迫はずっと香奈と呼ぶ。
人前でも二人の時でも。
「いや…何でもない」
「どうしたの?大迫らしくないよ?」
私の言葉に戸惑うように唇に指を当て考え込んでいたけど、ふいに私の手を握った。
驚き立ち止まった私を横目でチラっと見る大迫の耳がほんのり赤くなっている…?
私は大迫の手を振り払う事もせず、手を引かれるままに俯いて歩いた。
「廉…」
私は二人でいる時に初めて自分から名前を呼んだ。
「何?」
「やっぱいい…」
「お前らしくないな」
大迫はさっきのお返しだと言わんばかりに同じ言葉を返す。
「あっ、あのさ…明日も練習見に行っても…いいか…な…」
妙に恥ずかしくなってだんだん語尾が小さくなった私の手をギュッと強く握り返した。