「例え君が何者でも」-1
私、今まさに、金縛りに合ってます。
助けてください…。
20年生きてて一度もなったこと無いからアレですけど、目が開かない、体が動かない、声が出ないの三拍子揃ってます。その上、寝てる私の体に何か乗ってます。
これって、もうこれって、金縛りとしか言い様が無いですよねぇ!?認めたく無いけどそうですよねぇ!?
もう一度言います。
お願いだから助けてください…。
あ、上のが…上のが動きだしました!
「…き…よ」
ギャーッ!上のが…私の名前呼びました〜っ!あ、ちなみに私、一之宮 姫代と言います。初めまして。
って!自己紹介なんてしてる場合じゃないんです。
「姫代…」
ひえぇっ。何で私の名前…もう、私、取り付かれちゃいますよね。
「姫代ぉ〜」
あの、幽霊って、金縛りの時、人のほっぺたつつくもんなんですか?何かの儀式ですか?
「抵抗しねぇな」
ていうか、あなたのせいで金縛りなんですけど!
「ケッケッケッ」
悪魔なんだ!私の上の、悪魔なんだ。
「チュ〜ッ!」
えっ!?嘘でしょ!?な、何か近付く気配が…!顔に髪みたいのが触れてる!
とうとうくっ、唇に…!唇に…当たらない?
「なんつって、なんつって!ウケケケケッ」
楽しそうな幽霊の声。プニップニッとほっぺたをつつき続けています。
ん?待ってください!幽霊ってすぅ…てなるんじゃないんですか?金縛りだったら、お触りOKなんですか?
「姫代、気持ち良さそうに寝てんなぁ。オレも横なろっと!」
何でウキウキなんですか?来ないで、来ないでください!
「起こさないように、起こさないように…」
頭がゆっくり持ち上げられてます。何か、私に配慮してくれてます。
意外にいい人なのか?
枕の代わりに柔らかいような固いような、長くて細いけどがっしりしたものが入ってきました。
幽霊の腕だということに気付くのに時間は掛かりませんでした。
もう一つの手で私のおでこや頬、髪の毛などを撫でています。
その手付きはまるで愛しい者を扱うように…。そう!フィギュアオタクさんが限定フィギュアを扱うかのごとく、繊細でした。
何だか懐かしくていい気分になって来ました。
さわさわと触れられている部分が気持ち良くて、私は眠りの世界に落ち掛けました。
ダメダメ、寝ちゃダメ。だって、今、私を撫でてるのは幽霊。
幽…霊…。
「っは!」
あんまり気持ち良くて忘れてた!私、幽霊大っ嫌いなんです、めちゃめちゃ怖いんです!
あ、そういえば目が開いてます!体動きます!見慣れた部屋。私は興奮気味に手足をバタつかせて首を回してみたりしました。右向いて、左向いて
「ギャー─────ッ!!!!」
幽霊と目ぇ合っちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!