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ポッキーとプリッツ
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ポッキーとプリッツ-3

「あれ、慎吾君」

文句を…
ん?

階段を下りようとしてる俺をつぐみが見上げている。
右手を手摺にかけて、左手には愛用のエコバッグ。

「なぁに?まさか探しに行くつもりだったとか?」

ニヤニヤしながら一歩ずつ階段を上がって来やがる。

「まさか」
「じゃあどっか行くんだ。行ってらっしゃい」
「…クソ女」
「何ですって?」
「別に。それより何だよ、その荷物」

ナイロン性のエコバッグはトゲでも生えたように四方八方が尖っている。

「今日が何の日か思い出してもらう為に買って来たの」
「またその話」
「そ」

二人揃って部屋に戻ると、すっかりぬるくなった紅茶の脇にドサドサとバッグの中身を落とした。

「これ…」

それは大量のポッキーとプリッツ。
惚けてる俺に、つぐみは例のワードを言った。

「今日は何の日でしょうか」

携帯を開いて、ディスプレイ右上に小さく表示された日付を見る。
今日は、11月11日。
1111。
ふと、今朝見た情報番組を思い出した。

「…ポッキー&プリッツの日?」

俺の答えに、つぐみは得意気に笑う。

「だから、あたし達の日よ」
「勝手な事を…」
「最初にそう言ったのは慎吾君よ」
「俺!?いつ」
「去年の今日、一緒にテレビ見てた時」
「…」
「すごい嬉しかった。いつだって思い出を大事にしてるのはあたしだけじゃない?初めて慎吾君の方から特別な日を作ってくれて…、なのに何で忘れるわけ!?」

駄目だ、全っ然覚えてない。
多分その時テキトーに口から出た言葉なんだろうな。それを聞き逃さずきっちり覚えてるとは…。さすが記念日女、侮れん奴。

「さ、思い出してところでケーキ食べよっか」

ふとつぐみを見ればさっきまでの膨れっ面は消え失せて、満面の笑みで紅茶をいれなおしている。
喧嘩は絶えなかったけど、救いはこいつのこの切り替えの速さだな。
つぐみの正面に座って、パチンと手を合わせた。

「いたーだきます」


考えたらいつもこうだ。
絶対文句を言ってやろうと意気込んでも、幸せそうにケーキを頬張るつぐみを見ていると結局何も言えなくなる。


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