「彼女の艶母」-2
約束の日曜日―――
僕は千夏の部屋でポツンと一人ぼっちになっていた。
千夏はというと、僕が来るなりそそくさとパスタを作りに一階へ降りて行ってしまった。
慣れない女の子の部屋。
部屋の真ん中にちょこんと座り、首だけを動かしてキョロキョロと室内を見回してみる。
可愛らしいぬいぐるみ、小説、漫画本、CD……柔らかいピンクの色調がなんとなくエッチな感じだが、これといってワクワクするようなものは見当たらない。
僕は、あまりの退屈さにテーブル上に置いてある千夏のノートPCを勝手に開いてみた。
(あいつ、ひそかにエロサイトとか閲覧してたりして……)
興味本位でサイトの履歴を探ってみる。
案の定、履歴の消し方はまだ知らないようだ。履歴ボタンを押すと、これまでに千夏が開いてきたサイトが右横にズラズラと表示されてきた。
(あちゃー、僕のブログ、隈なく覗かれてるな〜!)
表示されたサイト名には、僕以外の人のブログタイトルもたくさん並んでいる。
上から順に見ていく中、僕の眼があるサイト名のところで止まった。
「Sexually novel……」
サイト名を呟きながら、頭の中で直訳してみる。
官能的な本……これって、間違いなくアダルトサイトだよな?
直感するや否や、酷く胸が昂ぶってきた。
僕は、階段の音と入口のドアを気にしながら、小さく「エイッ!」と叫んでからこのサイトをクリックしてみた。
(おっ……!?)
黒を色調とした、なんとなくダークな雰囲気のサイト。
サイトトップに書いてある文面からして、かなりエロいサイトである事には間違いない。
画面をスクロールしていき、『ハード官能』と書かれたリンクを押してみる。
(……新妻由紀……女子高生……あわわ、なんだか凄くエロそうだな……)
何作か掲載されている小説の中で、僕の指は迷いなく『新妻由紀』というタイトルのやつをクリックしていた。
言っておくが、僕はけっしてマザコンでも年上ズキでもない。
しかし、しかし、違うのだ。いや、何が違うのかって……あの、その……。
なんというか、千夏の家にお邪魔するようになってから、妙に『人妻』という単語が心を昂揚させるようになっちゃって……こほん。
僕は、部屋にある壁掛け時計に眼を向けた。
千夏が下に降りて、まだ十分ちょっとしか経っていない。
千夏は料理に時間をかけるため、おそらく三十分は戻ってこないだろう。
しかも今日はパスタとクラブハウスサンドを作ると言っていた。
下準備をしていても、いつもより時間が掛かるかもしれない。
僕は誰も居ない部屋でニヒッと笑みながら、興味津々で小説に眼を通しはじめた。